令和6年第一回都議会定例会 監査委員報告について

令和6年2月20日の第一回都議会定例会において、監査委員を代表して、 鈴木章浩委員が、定例監査、工事監査 、財政援助団体等監査など、過去1年間の監査結果を報告しましたのでお知らせします。

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令和6年第一回都議会定例会 監査委員報告(全文)

 監査委員を代表いたしまして、令和5年1月から12月までの1年間に実施した監査の結果について、御報告申し上げます。

 監査委員の責務は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう、各局の事務・事業を監査し、都民の信頼を確保していくことです。
 令和5年は、都政の重要課題を踏まえ、事業のリスク評価等により監査の重点化を図りながら、合規性はもとより、経済性や効率性、有効性の観点から検証・評価を行うとの方針の下、監査を実施しました。
 その結果、この1年間に都庁や事業所の569か所で監査を実施し、266件の指摘及び意見・要望を行い、総指摘金額は 約33億円でした。このうち、経費削減が可能なものや収入漏れなどは約9千万円でした。
 続いて、各々の監査の概況について申し上げます。

 第一に、定例監査について申し上げます。
 定例監査は、都の行財政全般を対象とした最も基本的な監査です。
 令和5年定例監査では、事業執行上のリスクや社会経済状況等を総合的に考慮し、局ごとに重点監査事項を設定して検証を行いました。
 その結果、都立公園等の樹木のナラ枯れ被害について、現状把握や将来予測に基づいた対処内容を定めておらず、効果的・経済的な対策が行われていなかった事例や、委託事業の履行確認が不十分であるにもかかわらず、支払を行っていた事例など、118件の指摘及び意見・要望を行いました。  

 第二に、工事監査について申し上げます。
 工事監査は、都が実施した工事等について、技術面から検証する監査です。
 令和5年は、「施工条件」の検証を重点監査事項に設定し、工事が所期の目的を達成し、効果を発揮するものになっているか、また、現場の安全対策が適切になされているか、監査を行いました。
 その結果、地下構造物の解体工事において、土質調査や、安全な解体方法の検討などが十分に行われていなかったため、安全対策を適切に行うように求めたものなど、27件の指摘及び意見・要望を行いました。  

 第三に、財政援助団体等監査について申し上げます。
 財政援助団体等監査は、都が出資や補助金の交付等を行っている団体や公の施設の指定管理者を対象とする監査です。
 令和5年の監査では、保育施設に対する補助金が過大に交付されていた事例や、点検などで不良と判定された消防設備等について修理等の対応を行っていなかった事例など、50件の指摘及び意見・要望を行いました。
 また、令和2年12月から継続して実施した、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に対する監査については、令和5年6月に、結果をとりまとめた報告書を提出・公表しました。
 報告書では、組織委員会の活動全般を包括的に検証し、評価されるべき点、必ずしも適切とは認められない点の両方を示しました。その上で、監査で明らかになった事項が、都の事業のみならず将来における国際大会の運営などに生かされ、より良い事業の実施に結びついていくよう、所見を述べました。

 第四に、行政監査について申し上げます。
 行政監査は、特定の事務や事業を対象として行う監査です。
 令和5年は、「公の施設の指定管理」をテーマとして設定し、指定管理者により管理・運営されている公の施設が、バリアフリー等の視点から、利用者のニーズに応えたものになっているか、検証を行いました。
 その結果、老朽化した施設等においてユニバーサルデザインの整備基準を満たしていない状況が一部見られたため、計画的な改善を求めた事例や、災害時の一時滞在施設に指定されている施設の運用計画に、必要とされる事項が定められていなかったため、適切な整備を求めた事例など、36件の指摘及び意見・要望を行いました。
 その上で、指摘及び意見・要望を踏まえ、適時・適切に業務内容の検証と改善を行い、更なる利用者サービスの向上と効率化を求めるとともに、今回の監査対象のみならず、都の各施設において、バリアフリー等の視点から、多様な利用者に対するサービス提供体制を整え、すべての人が平等に施設を利用できる環境の整備・改善を一層進めるよう、所見を述べました。

 第五に、決算審査等について申し上げます。
 令和4年度の決算について、数値の正確性や予算執行の適正性などを審査した結果、会計処理及び財産に関する調書の計数の一部誤りや、決算書類の作成について是正・改善を要する事項など、35件の指摘を行いました。
 また、地方公共団体の財政の健全化に関する法律に基づいて算定・公表が義務付けられている、健全化判断比率及び公営企業など10会計の資金不足比率の審査も行いました。その結果、全ての会計で実質赤字や資金不足等は生じていないなど、都の財政状況は健全な状態であることが確認できました。

 第六に、内部統制評価報告書審査について申し上げます。
 知事が作成した内部統制評価報告書について、監査で得られた知見に基づき、内部統制の評価手続及び重大な不備に当たるかどうかの判断が適切に行われているか審査を行いました。その結果、知事による評価が評価手続に沿って行われており、評価結果に係る記載は相当であることが確認できました。

 第七に、監査結果に対する措置状況について申し上げます。
 監査は、指摘した問題点が改善されて、初めて効果を発揮します。そこで、監査の実効性を担保するため、年2回、知事等関係機関から指摘や意見・要望の改善措置の通知を受け、その内容を確認し、公表しています。
 過去3年間に行った指摘や意見・要望については、91.4パーセントの案件が改善済となりました。改善に至っていない案件については、その理由や進捗状況の確認を行うなどして、早期の改善を促しております。
 改善事例の一例を申し上げます。変電所の受変電設備の整備において、設備がアンカーボルトで適切に固定されておらず、地震発生時に移動または転倒する恐れがあった事例では、監査指摘を踏まえ、補強工事が行われたほか、監査指摘をまとめた事例集を活用し、定期的な職場研修が実施されることとなりました。

 最後に、住民監査請求について申し上げます。
 令和5年は、19件の住民監査請求がありました。請求の要件を備えている2件については、監査を実施し、いずれも請求人の主張には理由がないと判断しました。

 以上、この1年間に実施した監査等について述べてまいりましたが、各種監査の指摘には、依然として、類似する事務の誤りが複数の職場で発生していることや、過去から同様の事例が繰り返されている状況が見受けられます。
 局長及び管理者においては、監査で指摘された事務の誤りは、どこの部署でも起こり得る共通の課題であると認識し、他の部署の指摘事例についても参考にしながら、改めて、内部統制の推進を通じた実効性の高い取組を行い、適正・適切な事務事業の執行に努めることを望みます。
 変化する社会情勢に応じ、都において様々な施策が展開される中、令和6年は、都政の状況を的確に踏まえ、経済性、効率性及び有効性の観点に基づく監査をより一層推進するなど、引き続き、都民の視点に立った質の高い監査の実施に努めるとともに、監査の効率化と重点化を進めてまいります。
 今後とも、都政の公正かつ効率的な運営のため、監査委員の使命を全力で果たし、都民の信頼と期待に応えていく決意であることを申し上げ、報告を終わります。