平成31年第一回都議会定例会 監査委員報告について

本日の第一回都議会定例会において、監査委員を代表して、清水やすこ委員が、定例監査、工事監査、財政援助団体等監査など、過去1年間の監査結果を報告しましたのでお知らせします。

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平成31年第一回都議会定例会 監査委員報告(全文)

監査委員を代表いたしまして、平成30年1月から12月までの1年間に実施した監査の結果について、御報告申し上げます。

監査委員の役割は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう、各局の事務・事業を監査し、都民の信頼を確保していくことです。
平成30年は、リスクの重要度に応じた効率的かつ効果的な監査を都民の視点に立って実施するという方針の下、定例監査、工事監査、財政援助団体等監査及び行政監査の四つの監査を有機的に連携させ、また、監査事務局の事務部門と技術部門が相互協力して監査品質の向上を図りました。
この1年間に都庁や事業所の640か所で監査を実施し、270件の指摘及び意見・要望を行いました。

第一に、定例監査について申し上げます。
定例監査は、都の行財政全般を対象とした最も基本的な監査です。 平成30年は、全庁重点監査事項として、都の施設の管理・運営において都民や利用者のニーズに応えるものとなっているか、各局を横断的に検証しました。また、局別重点監査事項として、局ごとにリスクを捉え、重要と考えられるテーマを設定し、監査を行いました。 その結果、海底トンネルにおいて、道路の舗装表面が陥没してできた穴、いわゆる「ポットホール」が同一箇所で頻繁に発生しているにもかかわらず、発生原因の調査等を行わなかったというものや、各施設の消防用設備について、点検で度々不備が明らかになっているにもかかわらず、対応を行っていなかったものなど、115件の指摘及び意見・要望を行いました。

第二に、工事監査について申し上げます。
工事監査は、都が実施した工事等について、技術面から検証する監査です。 平成30年は、「施設工事等の安全管理」を重点監査事項として設定し、監査を行いました。 その結果、擁壁の安定計算において、地質の設定を誤り、擁壁が転倒するおそれのある設計となっていたものや、ブロック塀の施工において、基礎が設置されておらず、倒壊のおそれがあったものなど、29件の指摘を行いました。 また、大規模工事については、事務部門が技術部門をサポートする仕組みを構築して、定例監査においても計画や契約手続などを確認し、実施件数や内容の充実を図りました。

第三に、財政援助団体等監査について申し上げます。
財政援助団体等監査は、都が出資や補助金の交付等を行っている団体や公の施設の指定管理者を対象とする監査です。 監査の結果、学校法人や社会福祉法人などに交付している補助金について、算定の根拠となる人数の誤りなどが原因で過大に交付されていた分を都に返還するよう求めたものや、都の監理団体である会社において、搬送業務委託やリース契約など複数の契約で入札参加者の辞退・失格が多く、実際には限られた事業者間での受注となっており、実質的に競争性が確保されていなかったものなど、70件の指摘及び意見・要望を行いました。

第四に、行政監査について申し上げます。
行政監査は、特定の事務や事業を対象として行う監査であり、学識経験者である監査専門委員などの助言を得て、二つのテーマで監査を実施しました。 一つ目は、「公の施設の指定管理について」です。本テーマでは、指定管理者制度の定着に伴い、各局に当事者意識の希薄化が生じているのではないかという問題意識の下、初めての取組として、利用者ニーズに応える先駆的なサービスを行っている都内外の民間や国公立の24施設をあらかじめ実地訪問等により調査した上で、それらと都の指定管理者の取組とを比較検討して、「提案型」の監査を行いました。 その結果、指定管理者が選定時に企画提案したサービスが実施されていなかったため、その着実な実施を求めたものや、局が目標値の明確な要求水準や管理指標を示さず、指定管理者にそれらの設定が委ねられている状況が認められたため、制度所管局に対して、各局に要求水準や管理指標を明確にさせるよう求めたものなど、29件の意見・要望を行いました。
二つ目は、「情報システムの効率的かつ効果的な運用について」です。本テーマでは、平成29年に、都のシステムの中央管理部門である総務局が行う各システムの企画、開発等の段階における評価の仕組みを検証したことを踏まえ、今回は、各局におけるシステムの運用段階における検証を実施し、11件の指摘を行いました。

第五に、決算審査等について申し上げます。
平成29年度の決算について、数値の正確性や予算執行の適正性・効率性などを審査した結果、会計処理及び財産に関する調書の計数の一部誤りについて、16件の指摘を行いました。 また、地方公共団体の財政の健全化に関する法律に基づいて算定・公表が義務付けられている、健全化判断比率及び公営企業など12会計の資金不足比率の審査も行いました。その結果、実質赤字比率等は良好であり、資金不足についても生じていないことが認められました。

ここで、監査結果に対する措置状況について申し上げます。
監査は、指摘した問題点が改善されて、初めて効果を発揮します。そこで、監査の実効性を担保するため、年2回、各局に指摘や意見・要望の改善状況の報告を求め、その内容を確認しています。 過去3年間に行った指摘や意見・要望については、90パーセント以上の案件が改善済となりましたが、残りの案件についても、早期の改善を促しております。 主な改善事例ですが、報告団体において、自動改札機等の廃棄・処分の契約を見直したものがありました。この団体は、装置内の個人情報の漏えいを防止するため、長年にわたり、同じ条件で特定の事業者と特命随意契約を結び、費用をかけて自動改札機等を処分していましたが、改めて調査したところ、個人情報を消した上で競争により売却できることが判明し、逆に収入を得ることができるようになりました。 また、平成29年のシステム監査において、全庁の情報資産を一元的に把握できる情報システム台帳の整備を求めた意見・要望について、「事業評価」において改善内容の検証が行われ、必要な経費が予算案に計上されました。この台帳に基づき、システムのライフサイクルを踏まえた見直しを進めることで、全庁的な情報システムの最適化が図られるものと期待します。

このほかに、都民から8件の住民監査請求があり、審査を行いました。

以上、この1年間に実施した監査について述べてまいりました。 監査の結果、契約の競争性が担保されていないものや、契約履行の確認不足、積算や補助金の算定誤りなど、複数の局で繰り返し発生している事例が多く見受けられました。 各局長及び管理者においては、組織の責任者として先頭に立ち、指摘事項の是正・改善のみならず、他局の監査・改善措置の事例も参考に、誤りの根本原因の解消や仕事の進め方の見直しなど再発防止に取り組み、都民サービスの更なる向上に努められるよう望みます。 平成29年の地方自治法の改正に伴い、都は内部統制体制の整備・運用状況について評価報告書をとりまとめ、監査委員がこれを審査することとなりました。

私ども5名の監査委員は、都の内部統制の強化に資する監査を行うとともに、監査結果・改善措置の庁内フィードバックを充実させ、再発防止の徹底や事務・事業の改善を後押ししてまいります。 また、監査品質を向上させるため、ICTを積極的に活用して、都が保有する財務や財産などのデータを多角的に分析する手法を導入し、監査の着眼点の発見や対象案件の抽出の端緒とするほか、ベテラン職員のスキルを若手に承継するため、職員研修の充実を図ります。 都民への情報発信については、ホームページに監査結果の検索システムを新たに設け利便性の向上を図りました。さらに、SNSなどの広報媒体を活用し、社会動向や都民ニーズに応える積極的な発信に努めてまいります。 今後とも、都政の公正かつ効率的な運営のため、監査委員の使命を全力で果たし、都民の信頼と期待に応えていく決意であることを申し上げ、報告を終わります。