令和2年第一回都議会定例会 監査委員報告について

本日の第一回都議会定例会において、監査委員を代表して、大津ひろ子委員が、定例監査、工事監査、財政援助団体等監査など、過去1年間の監査結果を報告しましたのでお知らせします。

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令和2年第一回都議会定例会 監査委員報告(全文)

 監査委員を代表いたしまして、平成31年1月から令和元年12月までの1年間に実施した監査の結果について、御報告申し上げます。

 監査委員の責務は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう、各局の事務・事業を監査し、都民の信頼を確保していくことです。
 令和元年は、リスクの重要度を踏まえ監査の重点化を図り、合規性はもとより、経済性、効率性及び有効性の観点から、本庁や事業所等の653か所で監査を実施しました。その結果、180件の指摘及び意見・要望を行い、総指摘金額は約3億4,490万円でした。


 第一に、定例監査について申し上げます。
 定例監査は、都の行財政全般を対象とした最も基本的な監査です。
 令和元年は、都における一般歳出予算の約3割を占める「補助金」を全庁重点監査事項として、交付事務の適正性だけでなく、補助事業が政策目的に沿って設計されているかについて、各局を横断的に検証しました。
 その結果、要綱や協定に補助要件などの重要な事項が記載されていなかったものなどがあったため、是正・改善を求めました。
 補助金は、一旦制度を創設すると容易に廃止することができず、既得権化するおそれがあることから、適切な成果指標を設定した上で、成果が得られなかった場合には廃止や縮小を含めた見直しを検討する必要があります。
 執行率が低い補助金についても、安易に補助要件の緩和や補助率の改定を行うのではなく、制度周知の取組は十分か、政策目的を達成するための手段として本当に必要かを検討することが重要です。
 また、局別重点監査事項として、局ごとにリスクを捉え、重要と考えられるテーマを設定し、監査を行いました。
 その結果、都立病院において、受託者による診療材料の在庫管理が適切に行われていない状況を病院が把握していなかったものや、浸水被害を防止するための雨水の排水施設において、設備更新の時期や内容が定まっていなかったものなどがあったため、是正・改善を求めました。

 第二に、工事監査について申し上げます。
 工事監査は、都が実施した工事等について、技術面から検証する監査です。
 令和元年は、一昨年の大阪府北部の地震に伴うブロック塀の倒壊事故などを踏まえ、「性能確保」を重点監査事項として、監査を行いました。
 また、大規模工事については、最新の土木技術に精通する専門家を監査専門委員として活用し、監査の高度化を図りました。
 その結果、排水機場において、新たに設置した給気ファンが建物基礎に固定されておらず、地震発生時に転倒し破損するおそれがあったものや、下水道工事において、設計時に関係者と調整を行わなかった結果、工期が延長となり、不必要な経費を要したものなどがあったため、是正・改善を求めました。
 各局においては、安全性の確保はもとより、効率的かつ効果的な事業の実施に向けて、主体的・体系的なチェック機能の充実強化、各職場に対する組織的な技術支援の拡充などの取組を求めます。

 第三に、財政援助団体等監査について申し上げます。
 財政援助団体等監査は、都が出資や補助金の交付等を行っている団体や公の施設の指定管理者を対象とする監査です。
 監査の結果、社会福祉法人などに交付している補助金について、算定の根拠となる人数の誤りなどが原因で過大に交付されていたものや、政策連携団体である会社が締結した複数の委託契約について、履行確認に不備があるにもかかわらず支払を行っており、契約事務に係る内部統制が不十分であったものなどが認められたため、是正・改善を求めました。
 都は、特に都政との関連性が高く、全庁的に指導・監督を行う必要がある団体を「東京都政策連携団体」と位置づけておりますが、先般、一部の政策連携団体において、受注者との不適切な関係や書類の改ざんなどが発覚し、団体の内部統制に対する意識の低さと所管局の団体に対するガバナンスが不十分であったことが明らかとなりました。また、大半の業務が都からの受託事業であるにもかかわらず、多額の利益剰余金を計上している例も見られます。都は、団体に対するガバナンス強化の取組を一層推進するとともに、より低廉な価格水準で委託できるよう、政策連携団体の効率的な事業運営の確保を求めます。

 第四に、行政監査について申し上げます。
 行政監査は、特定の事務や事業を対象として行う監査です。
 令和元年は、3か年のシステム監査の総仕上げとして、都の現状に対する監査にとどまらず、国や民間企業等の先駆的な事例を踏まえ、将来に向けて都が目指すべきシステム統制のあり方について検証しました。
 都においては、ICTに係る施策を機動的に遂行するため、強力な統制力を持つトップマネジメント直轄の組織を整え、高度な知見とキャリアを有する専門家を各局に派遣するなど、システム統制に向けた体制を整備することが有効と考えます。
 また、都民サービスの更なる向上に向けては、局の垣根を超えた共通プラットフォームを構築し、ワンストップで行政サービスを提供するとともに、最新の技術に対して積極的に投資が可能となる機動的な事業の進め方も有効であると考えます。
 そこで、都のICT中央管理部門が、各局と連携して、ICTを活用した業務改革及び都民サービス向上に資する取組をより一層推進するよう、意見・要望を行いました。

 第五に、決算審査等について申し上げます。
 平成30年度の決算について、数値の正確性や予算執行の適正性・効率性などを審査した結果、会計処理及び財産に関する調書の計数の一部誤りについて指摘を行いました。
 また、地方公共団体の財政の健全化に関する法律に基づいて算定・公表が義務付けられている、健全化判断比率及び公営企業など12会計の資金不足比率の審査も行いました。その結果、実質赤字比率等は良好であり、資金不足も生じていないことが認められました。

 次に、監査結果に対する措置状況について申し上げます。
 監査は、指摘した問題点が改善されて、初めて効果を発揮します。そこで、監査の実効性を担保するため、年2回、各局に指摘や意見・要望の改善状況の報告を求め、その内容を確認しています。
 主な改善事例ですが、劇場施設において、アクセスマップの作成や点字ブロックの追加設置が行われ、施設のバリアフリー化がより一層推進されたものや、動物園の擁壁の設置工事において、設計の誤りにより転倒のおそれがあったため、工事施工前に速やかに地盤改良等を行うことで安全性が確保されたものがありました。
 過去3年間の案件については、速やかに対応がなされ、90パーセント以上が改善済となりました。残りの案件についても、早期の改善を促してまいります。

 このほかに、都民から29件の住民監査請求があり、審査を行いました。

 以上、この1年間に実施した監査について述べてまいりましたが、財産管理の不備、積算や補助金の算定誤りといった不適切事例の多くは、複数の局で、毎年繰り返し発生しています。
 各局長及び管理者においては、組織の責任者として先頭に立ち、誤りの根本原因の解消や仕事の進め方の見直しなど再発防止に取り組み、都民サービスの更なる向上に努められるよう求めます。加えてICTの活用により事務のチェック体制を万全にすることを望みます。
 私ども監査委員は、電子データを積極的に活用し、各局職員の事務負担の軽減と監査の効率化に取り組むとともに、データを多角的に分析して新たなリスクを識別し、監査品質を向上させてまいります。
 また、情報発信については、監査結果の庁内フィードバックを充実させ、再発防止の徹底や事務・事業の改善を後押しするとともに、多様な媒体を通じて、社会動向や都民ニーズに応える効果的な発信に努めてまいります。
 4月には、いよいよ改正地方自治法が施行となり、内部統制体制の整備、運用及び評価が義務付けられます。私ども5人の監査委員は、内部統制を推進する知事と認識の共有を図り、効果的な内部統制の整備・運用に寄与してまいります。また、内部統制が機能していることを前提に監査を行うことで、都の事務・事業の本質的な改善に、より一層重点的に取り組んでまいります。
 今後とも、都政の公正かつ効率的な運営のため、監査委員の使命を全力で果たし、都民の信頼と期待に応えていく決意であることを申し上げ、報告を終わります。