令和3年第一回都議会定例会 監査委員報告について

令和3年2月17日の第一回都議会定例会において、監査委員を代表して、山内晃委員が、定例監査、工事監査など、過去1年間の監査結果を報告しましたのでお知らせします。

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令和3年第一回都議会定例会 監査委員報告(全文)

 監査委員を代表いたしまして、令和2年1月から12月までの1年間に実施した監査の結果について、御報告申し上げます。

 監査委員の責務は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう、各局の事務・事業を監査し、都民の信頼を確保していくことです。
 令和2年監査は、新型コロナウイルス感染症の影響により、財政援助団体等監査及び行政監査については実施を見送るなど当初計画から期間の変更や実施規模の一部縮小等を行いましたが、本庁や事業所等、411か所で実施し、131件の指摘及び意見・要望を行いました。
 また、会計処理などについて指摘を行った総指摘金額は約288億8百万円で、このうち、経費削減が可能なものや収入漏れなどは約1億3千万円でした。


 第一に、定例監査について申し上げます。
 定例監査は、都の行財政全般を対象とした最も基本的な監査です。
 令和2年は、「東京都政策連携団体に対するガバナンス」を全庁重点監査事項として、各局における政策連携団体に対する指導監督状況について検証しました。また、局ごとにリスクを捉え、重要と考えられるテーマを局別重点監査事項として設定し、監査を行いました。
 その結果、全庁重点監査事項に関しては、局が協定により政策連携団体に委託している業務について、局の事前承認がないまま団体が第三者に業務の一部を再委託している状況が見受けられたため、適切に対処するよう求めたもの、局別重点監査事項に関しては、水道の維持補修等を目的とした緊急工事について、その必要性が不明確な案件などが認められたため、緊急工事に係る事務を適正に行うよう求めたものがありました。
 そのほか、都営地下鉄駅構内の防災設備について、定期点検で繰り返し不具合があり、安全性に問題があると指摘されているにもかかわらず、修繕等の対応を行っていない状況であったため、直ちに修繕を求めたものなど、合計76件の指摘及び意見・要望を行いました。

 第二に、工事監査について申し上げます。
 工事監査は、都が実施した工事等について、技術面から検証する監査です。
 令和2年は、工事の各段階において包括的に確認、指導・監督を行う体制である「監理体制」を重点監査事項として設定し、監査を行いました。
 その結果、マンホールの設置工事において、設計上、鉄筋量が不足しており、地震に対する安全性が確保されていない設計となっていたため、設計を適正に行うよう求めたものや、だれでもトイレ設置工事において、入口に車いす利用者が容易に通行できるための水平面を設けていない設計となっていたため、東京都福祉のまちづくり条例に適合した整備を行うよう求めたものなど、25件の指摘及び意見・要望を行いました。

 第三に、決算審査等について申し上げます。
 令和元年度の決算について、数値の正確性や予算執行の適正性などを審査した結果、会計処理及び財産に関する調書の計数の一部誤りや決算書類の作成について是正・改善を要する事項など、30件の指摘を行いました。
 また、地方公共団体の財政の健全化に関する法律に基づいて算定・公表が義務付けられている、健全化判断比率及び公営企業など12会計の資金不足比率の審査も行いました。その結果、実質赤字比率等に問題はなく、資金不足についても生じていないことが認められました。

 ここで、監査結果に対する措置状況について申し上げます。
 監査は、指摘した問題点が改善されて、初めて効果を発揮します。そこで、監査の実効性を担保するため、年2回、知事等関係機関から指摘や意見・要望の改善状況の通知を受け、その内容を確認しています。
 過去3年間に行った指摘や意見・要望については、96.4パーセントの案件が改善済となり、昨年の改善率に比べ4.2ポイント増加しました。改善に至っていない案件についても、その理由や進捗状況の確認を行うなどして、早期の改善を促しております。
 主な改善事例ですが、海底トンネルで道路の舗装表面に穴が頻繁に発生し、補修を繰り返し行っているにもかかわらず、発生原因の調査等が行われていなかった事例では、監査結果を踏まえ、現場調査を実施し原因を特定したことで、今後は同様の事象が生じないよう対策を行うこととしたものがありました。
 また、令和元年の行政監査において、都の業務改革及び都民サービスの向上に資するデジタルトランスフォーメーションの更なる推進に取り組むよう求めた意見・要望を行いましたが、現在では、行政手続のワンスオンリーモデル事業等の実施に向けて、検討が進められており、また民間等から登用したデジタル人材を活用しながら、「東京都ICT戦略」の着実な実施に向けて取り組んでいくこととしています。

 このほかに、都民から11件の住民監査請求があり、このうち、法が定める要件を満たした請求1件について、都が政策連携団体に支出した出えん金の管理に関して、出えん目的に適合するよう適正に行われていたか監査を実施しました。
 その結果、出えん金の管理を怠る事実は認められなかったものの、当該事業は広義の都施策といえることから、都は、今後、一層適切な関与をしていくよう意見を付しました。

 以上、この1年間に実施した監査等について述べてまいりましたが、財産管理の不備、契約履行の確認不足、積算の誤りなどは、複数の局で繰り返し発生しています。
 各局長及び管理者においては、組織の責任者として先頭に立ち、自局の指摘事項の是正・改善のみならず、他局に対する監査結果等も参考にし、誤りの根本原因の解消や仕事の進め方の見直しなど再発防止に取り組み、都民サービスの更なる向上に努められるよう望みます。
 令和3年は、定例監査や行政監査など各種監査を有機的に連携させ、新型コロナウイルス感染症対策関連の事業や感染症が各局事業に与えた影響などの検証を重点的に行ってまいります。
 また、財政援助団体等監査においては、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会及び東京2020大会関連団体の監査を実施します。

 さらに、令和2年4月に改正地方自治法が施行され、知事部局において内部統制の整備・運用が始まっています。令和3年からは、知事が作成した内部統制評価報告書について、これまでの監査で得られた知見に基づき、内部統制の評価手続き及び重大な不備に当たるかどうかの判断が適切に行われているか審査を行ってまいります。

 今後とも、都政の公正かつ効率的な運営のため、監査委員の使命を全力で果たし、都民の信頼と期待に応えていく決意であることを申し上げ、報告を終わります。