令和4年第一回都議会定例会 監査委員報告について

令和4年2月16日の第一回都議会定例会において、監査委員を代表して、山田ひろし委員が、定例監査、工事監査など、過去1年間の監査結果を報告しましたのでお知らせします。

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令和4年第一回都議会定例会 監査委員報告(全文)

 監査委員を代表いたしまして、令和3年1月から12月までの1年間に実施した監査の結果について、御報告申し上げます。

 監査委員の責務は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう、各局の事務・事業を監査し、都民の信頼を確保していくことです。
 令和3年監査は、感染力が強い変異株の発生など、新型コロナウイルスの感染が長期化かつ深刻化する中、大幅な計画変更が必要となりました。その結果、行政監査は令和3年、4年と2か年にまたがって実施することとし、また、財政援助団体等監査は東京2020大会関連団体の3団体に絞るなど、実施時期の変更や実施規模の縮小を行いましたが、本庁や事業所等、322か所で実施し、131件の指摘及び意見・要望を行いました。
 また、会計処理などについて指摘を行った総指摘金額は約56億3千万円で、このうち、経費削減が可能なものや収入漏れなどは約1億9千万円でした。


 第一に、定例監査について申し上げます。
 定例監査は、都の行財政全般を対象とした最も基本的な監査です。
 令和3年は、「新型コロナウイルス感染症対策事業」を重点監査事項として、各局の新型コロナウイルス感染症対策事業や同感染症により休止、縮小又は延期などの影響を受けた事業の事務処理等について検証しました。
 その結果、重点監査事項に関しては、イベント配布用広報グッズについて、コロナ禍で多くのイベントの開催を中止したにもかかわらず、広報グッズを前年度と同規模で購入していたため、配布状況等に応じて購入するよう求めたものがありました。
 また、財団と共催で実施しているアーティスト等への支援事業において、財団へ既に概算払により支払っている経費の精算を行わないまま、重ねて概算払を行っていたため、適正に行うよう求めたものなど、74件の指摘及び意見・要望を行いました。

 第二に、工事監査について申し上げます。
 工事監査は、都が実施した工事等について、技術面から検証する監査です。
 令和3年は、各局の行う事業が所期の目的を達成し、また効果を上げている工事となっているかという「工事の有効性」の検証を重点監査事項として設定し、監査を行いました。
 その結果、ホームドア設置に伴い実施する駅のプラットホームの補強工事に使用するアンカーボルトの設計において、より経済的なアンカーボルトを使用できるにもかかわらず、他路線の補強工事で使用したものと同じ規格のものをそのまま本工事でも使用していたため、設計等を適切に行うよう求めたものがありました。
 また、林道上の斜面を安定させるための補強工事の設計において、設計条件となる地質の確認が不十分であったため、設計を適正に行うよう求めたものなど、31件の指摘及び意見・要望を行いました。

 第三に、財政援助団体等監査について申し上げます。
 財政援助団体等監査は、都が出資や補助金の交付等を行っている団体や公の施設の指定管理者を対象とする監査です。
 令和3年は、東京2020大会関連の補助金等の交付を行っている2団体に対して監査を実施しました。
 監査の結果、指摘及び意見・要望事項は認められませんでした。
 また、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に対する監査も行っており、本監査については、令和4年も継続して実施していきます。

 第四に、決算審査等について申し上げます。
 令和2年度の決算について、数値の正確性や予算執行の適正性などを審査した結果、会計処理及び財産に関する調書の計数の一部誤りや決算書類の作成について是正・改善を要する事項など、26件の指摘及び意見・要望を行いました。
 また、地方公共団体の財政の健全化に関する法律に基づいて算定・公表が義務付けられている、健全化判断比率及び公営企業など12会計の資金不足比率の審査も行いました。その結果、国が定めた基準に対し、健全化判断比率、資金不足比率ともに問題がないことが認められました。

 第五に、内部統制評価報告書審査について申し上げます。
 令和2年4月に改正地方自治法が施行され、知事部局において内部統制の整備・運用が始まっています。令和3年からは、知事が作成した内部統制評価報告書について、これまでの監査で得られた知見に基づき、内部統制の評価手続き及び重大な不備に当たるかどうかの判断が適切に行われているか審査を行いました。その結果、知事による評価が評価手続きに沿って行われており、評価結果に係る記載は相当であることが認められました。

 次に、監査結果に対する措置状況について申し上げます。
 監査は、指摘した問題点が改善されて、初めて効果を発揮します。そこで、監査の実効性を担保するため、年2回、知事等関係機関から指摘や意見・要望の改善状況の通知を受け、その内容を確認しています。
 過去3年間に行った指摘や意見・要望については、96.3パーセントの案件が改善済となりました。引き続き、改善に至っていない案件についても、その理由や進捗状況の確認を行うなどして、早期の改善を促しております。
 主な改善事例ですが、利便性の向上に向けた事例では、外国人旅行者等に向けた交通安全教育動画を9言語で作成していたにもかかわらず、インターネットでは英語及び中国語のみで配信されていたため、9言語での配信に改善したものがありました。
 また、都施設のバリアフリー化に向けた事例では、公園にだれでもトイレを設ける場合は、戸の出入口の手前に一定水準以上の広さの水平面を設けることとされていたにもかかわらず、設計段階でこの水平面が設けられていなかったため、工事の契約変更や図面の修正を行ったものがありました。

 このほかに、住民監査請求が9件ありましたが、いずれも監査を実施するための要件を満たしていませんでした。


 以上、この1年間に実施した監査等について述べてまいりましたが、今回の監査においては、コロナ禍という状況の中、特に新型コロナウイルス感染症の影響などによる契約変更に伴う事務処理の誤りが複数の局で見られるとともに、これまでも繰り返し発生している財産管理の不備、契約履行の確認不足、積算の誤りなども認められました。
 こうした監査結果を踏まえ、指摘等の是正・改善に向けて、各局長及び管理者は、組織の責任者として先頭に立ち、自局の指摘事項のみならず、他局に対する監査結果等も参考にし、誤りの根本原因の解消や仕事の進め方の見直しを行うことで再発防止に取り組むなど、更なる内部統制の充実・強化を図り、都民サービスの一層の向上に努められるよう望みます。
 令和4年は、定例監査をはじめとした各種監査等を有機的に連携させ、都の事務及び事業を横断的・多角的に検証し、合規性はもとより経済性、効率性、有効性の観点も踏まえ、相乗効果の高い監査を実施してまいります。とりわけ、新型コロナウイルス感染症対策事業や同感染症により影響を受けた事業については、令和3年に引き続き、重点的に検証を行ってまいります。

 今後とも、都政の公正かつ効率的な運営のため、監査委員の使命を全力で果たし、都民の信頼と期待に応えていく決意であることを申し上げ、報告を終わります。