住民監査請求結果(平成14年度受付分)

件名 受付日 結果通知日
1 交通信号機にかかる保守委託契約及び設置工事契約に談合等の違法・不当な行為があるとし必要な措置を求める件 平成14年4月4日 平成14年5月30日
2 壁体撤去に要する経費の支払は不当であるとして当該工事の差止など必要な措置を求める件 平成14年4月22日 平成14年6月20日
3 平成12年度修了生実態調査委託契約が履行期限内に履行されなかったにもかかわらず経費を支出し損害賠償請求等を怠ることを違法として必要な措置を求める件 平成14年5月27日 平成14年7月24日
4 自動車税納税済照合事務の委託契約にかかる経費の支出を違法・不当としその返還等の必要な措置を求める件 平成14年6月7日 平成14年8月1日
5 都営住宅敷地の一部を不法占有されていることは財産の管理を怠るなどとして必要な措置を求める件 平成14年6月13日 平成14年8月8日
6 財務局主計部における議会対応に伴う宿泊料金の支出を違法・不当としてその返還を求める件 平成14年6月13日 平成14年8月8日
7 大型造園工事における談合行為による損害賠償請求を怠るとして必要な措置を求める件 平成14年6月14日 平成14年8月8日
8 財務局経理部における議会対応に伴う宿泊料金の支出を違法・不当としてその返還を求める件 平成14年7月30日 平成14年9月25日
9 自動車税納税済照合事務の委託契約にかかる経費の支出を違法・不当として必要な措置を求める件 平成14年8月16日 平成14年10月10日
10 前衛生局長の議会対応のための宿泊に伴う宿泊料金の支出を違法・不当としてその返還を求める件 平成14年8月29日 平成14年10月23日
11 国立市立小学校職員に対する超過勤務手当等の支給を違法・不当としてその返還等の必要な措置を求める件 平成14年9月13日 平成14年11月6日
12 交通局職員が職務専念義務違反行為を行ったにもかかわらず減額せず給与を支給したことを違法・不当としてその返還を求める件 平成14年11月6日 平成14年12月24日
13 交通局の局職員等に対する職務乗車証等の作成・配付は利益供与であり当該行為に伴う経費の支出を違法・不当としてその返還等を求める件 平成15年1月21日 平成15年3月24日
14 警視庁が発注する信号機等工事などの契約に際し談合があったとして談合による損害の返還等を求める件  平成15年3月27日 平成15年5月22日

1 交通信号機にかかる保守委託契約及び設置工事契約に談合等の違法・不当な行為があるとし必要な措置を求める件

請求日 平成14年4月4日
結果通知日 平成14年5月30日

請求人の主張

平成12年度及び13年度の交通信号機にかかる保守契約及び工事契約は、談合による不適正な価格で締結されており、その支出が違法・不当であるとして、損害補てん等の必要な措置を求めた。

監査結果

理由なし(棄却)

本件保守契約及び本件工事契約の入札・契約手続について、監査対象局に対して事情聴取し、起工書及び予定価格書等の関係書類の調査を行ったところ、法令に基づき適正に行われ、談合防止策も適切に実施されていることから、談合行為の存在を疑わせるに足る事実を認めることができなかった。

入札参加者のうち7社に対し関係人調査を行ったところ、談合行為の存在を疑うに足る事実を認めることはできなかった。また、7社とも談合行為を否定した。

信号機の設置工事に関する談合の疑いで公正取引委員会が関係各社に対して立ち入り検査を行ったことについて、公正取引委員会は、現に調査中の案件については答えられないとのことであった。また、本件保守契約及び本件工事契約について、現時点では公正取引委員会の判断は出されていない。

以上のことから、現時点においては、本件保守契約及び本件工事契約について、談合行為の存在を確認できなかった。

なお、請求人は、本件工事契約の落札率が高いことをもって談合の形跡は明らかだとしているが、平成12年6月8日の津地裁判決において、「落札価格が予定価格に近いこと自体が談合行為の存在を示すものではない。」と判示されており、落札率が高いことをもってただちに談合行為の存在を推定できるものではない。

したがって、現時点においては、本件保守契約及び本件工事契約にかかる支出が違法・不当であるとの判断をすることはできないことから、請求人の主張には理由がないものと判断した。

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2 壁体撤去にかかる経費の支払は不当であるとして当該工事の差止めなど必要な措置を求める件

請求日 平成14年4月22日
結果通知日 平成14年6月20日

請求人の主張

旧空堀川は河川としての実態が完全に失われたにもかかわらず、河川法上の廃川手続を行っていないことは違法であるから、河川管理上の理由により本件止水壁を撤去することは違法・不当である。

旧空堀川が河川区域であるとしても、清瀬市によって公園施設として平穏に占有管理されているため、本件止水壁を撤去する河川管理上の必要性がなく、また、河川の氾濫に備えた止水壁として、むしろ河川管理上撤去してはならない。

以上のことから、本件止水壁の撤去は違法・不当であるとして、その差止め等を求めた。

監査結果

理由なし(棄却)

都と清瀬市との協議において、本件流域雨水にかかる清瀬市の公共下水道整備計画がないことから、都が、本件流域雨水を受け入れ、柳瀬川に流下させるという役割を旧空堀川に担わせることとしたことについては、合理的理由があることから、廃川手続を行っていないとしても違法とはいえないとする監査対象局の説明は妥当であるとした。

本件止水壁は、水害防止という当初の設置目的を失っていること、及び旧空堀川の占用許可の目的である公園整備にとって支障となっていることが認められることから、本件止水壁を撤去する必要があるとする監査対象局の説明は妥当であるとした。

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3 平成12年度修了生実態調査委託契約が履行期限内に履行されなかったにもかかわらず経費を支出し損害賠償等を怠ることを違法とし必要な措置を求める件

請求日 平成14年5月27日
結果通知日 平成14年7月24日

請求人の主張

本件契約の相手方である富士総研の責めに帰すべき理由により、履行期限までに契約内容を履行することができなかったにもかかわらず、都は富士総研から遅延違約金を徴していないのは違法である。

本件契約が履行期限内に履行されていないにもかかわらず、履行されていない部分の経費も含め、都が委託料を支払ったことは違法であり、富士総研に対し不当利得返還請求を行っていないのは違法である。

以上のことから、不当利得返還請求を行うこと、損害賠償請求を行うこと等を求めた。

監査結果

理由なし(棄却)

遅延違約金を徴していないことについては、都側が作業の基準となる作業内容を記載したマニュアルを作業途中で変更・追加等することにより、作業の遅れを生じさせた結果、富士総研は契約を履行期限内に履行できなかったとする産業労働局の説明には合理的理由があり、履行期限内に履行できなかったことについて富士総研の責めに帰すべき理由はないと認めた。

本件契約が履行されていないにもかかわらず契約金額全額を支出したことについては、本件契約の成果物の一部は履行期限は徒過したものの、委託料を支出する前には納品されていることが推定され、その他の成果物について納品が確認できないまま支出命令をしたことは違法ではあるが、最終的には納品され、都に損害はないと認めた。

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4 自動車税納税済等照合事務の委託契約にかかる経費の支出を違法・不当としてその返還等の必要な措置を求める件

請求日 平成14年6月7日
結果通知日 平成14年8月1日

請求人の主張

本件委託契約において、他県登録車両の処理に対する経費を支出していることは違法・不当である。

監査結果

理由あり(勧告)

本件振興会は本件委託契約に基づき、都内登録車両の延滞金照合事務を行っているものの、一連の作業の流れの中で、都内登録車両と他県登録車両について同一の処理を行った後、納税証明書を都内分と都外分とに分類しているなどの事実が認められた。

都内登録車両について延滞金照合事務を行うためには、その前提として、都内登録車両か他県登録車両かの分別を行う必要があり、分別業務の誤りがそのまま延滞金照合事務の見落としにつながる重要な業務であると主税局が説明する分別業務が行われているとは認められない。

したがって、実際には行われていない分別業務に対して経費を支出していることは違法・不当といわざるを得ず、都は、この支出額を都の損害として、次の措置を行うことを勧告する。

平成14年10月31日までに、都が被った損害額(平成13年度契約において、分別業務に対する経費として支出した委託料相当額)及び利子相当額を確定し、その補てんのために必要な措置を講じること。

平成14年度契約については、分別業務に対する経費を支出しないこと。

知事が講じた措置(PDF 55KB)
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5 都営住宅敷地の一部を不法占有されていることは財産の管理を怠るなどとして必要な措置を求める件

請求日 平成14年6月13日
結果通知日 平成14年8月8日

請求人の主張

都営廻田町四丁目アパートの団地内通路の一部及び久米川駅東住宅の敷地の一部が、自治会により駐車場として無断で使用されていることは、財産の管理を怠るものである。

監査結果

理由なし(棄却)

久米川駅東住宅は、東京都住宅供給公社の住宅であり、その敷地は同公社が所有していることが判明したため、監査の対象としなかった。

団地内通路の一部が自治会によって、遅くとも平成5年から平成14年7月2日まで駐車場として無断で使用されていたことが認められ、財産の管理を怠る事実があったものといわざるを得ない。

東京地裁昭和54年12月20日判決によると、財産の管理を怠る事実のうち、住民監査請求の対象となるのは、当該地方公共団体の有する財産の財産的価値の維持、保全等の財務的処理を直接の目的とする財産管理に限られ、特定の有体物を一定の行政目的実現のうえで支障のない状態に維持する作用である公物管理を含まないと解されている。

公営住宅法及び住宅条例において、住宅局は、都営住宅等の管理を適正かつ合理的に行うことが求められ、一方、居住者は、都営住宅等を正常な状態において維持することが義務づけられている。また、居住者は、都営住宅等を正常な状態において維持するなどのため、自治会を組織している。

これらのことから、自治会により、団地内通路の一部が無断で駐車場として使用されていたことは、居住者に課せられている都営住宅等を正常な状態において維持する義務にかかる都営住宅管理上の問題であり、住民監査請求の対象と はならない公物管理上の問題である。

したがって、請求人の主張には理由がない。

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6 財務局主計部における議会対応に伴う宿泊料の支出を違法・不当としてその返還を求める件

請求日 平成14年6月13日
結果通知日 平成14年8月8日

請求人の主張

都議会開会中の議会対応のため、財務局管理職が、安い料金の宿泊施設に宿泊せず高い料金の宿泊施設に宿泊したことを違法・不当として、安い料金の宿泊施設の宿泊料との差額の返還を求めた。

監査結果

理由なし(棄却)

本件宿泊は、「組織運営費支出基準の廃止と宿泊施設の「借上料」の取り扱いについて」において定めている公費負担で宿泊できる場合に該当し、本件管理職借上料の支出についても適正に執行されている。

本件取扱いにおいて定めている借上料の上限額は、職員の旅費に関する条例を参考として設定されたことが認められ、また、本件取扱いの趣旨から、都庁舎に隣接する利便性の高い宿泊施設の利用料金を勘案して設定されたとする説明には合理的理由が認められることから、本件取扱い上限額の設定は、裁量の範囲を逸脱するものとは認められない。

監査の過程において、都議会開会中に、主計部一般職員にかかる借上料として支出した経費のうちの19万3,800円について、本件取扱いに反す る支出であることを確認したが、平成14年7月30日に全額の返納が完了しており、 都が被った損害は既に補てんされたことが認められる。

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7 大型造園工事における談合行為による損害賠償請求を怠るとして必要な措置を求める件

請求日 平成14年6月14日
結果通知日 平成14年8月8日

請求人の主張

本件造園工事について談合行為がなければ成立したであろう想定落札価格と実際の契約金額との差額相当額の損害を都は被っており、談合行為を行った各業者に対して行うべき損害賠償請求を、都は違法・不当に怠っている。

監査結果

理由あり(勧告)

本件造園工事のうち、公取委が談合行為の存在を認定した33件の個別工事については、談合行為の存在が推認される。それ以外の個別工事については、公取委が談合行為の存在を認定していないことから、談合行為の存在を確認できない。

談合行為が存在する場合は、談合が行われなかった場合に形成されたであろう公正な競争を前提とする価格よりも高額な金額で契約が締結された蓋然性が高く、本件認定工事については、談合行為の存在が推認されるので、談合行為がなければ成立したであろう想定落札価格と実際の契約金額との差額相当額の損害が発生しているものと認めざるを得ない(平成13年9月7日名古屋地裁判決も同趣旨)。

損害が発生していることが認められ、損害額の立証が極めて困難である場合であっても、民事訴訟法第248条の規定により、裁判所が、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができ、この規定を適用して、談合による損害額を認定した下級審判決も出されている(平成11年10月20日奈良地裁判決ほか)。

現時点で損害賠償請求できる状況にはないとする財務局等の主張は妥当とは認められず、損害賠償請求権を行使していないことは、財産管理を怠るものといわざるを得ない。

よって、談合行為がなければ成立したであろう想定落札価格と実際の契約金額との差額相当額の損害を都は、被っており、談合行為を行った各業者に対して行うべき損害賠償請求を、都は違法・不当に怠っているとの請求人の主張は、本件認定工事については、理由がある。

本件造園工事のうち、公取委が課徴金納付命令を行うに当たって談合行為の存在を認定した33件について損害額を算定し、平成14年11月30日までに損害賠償請求権を行使することを勧告する。

知事が講じた措置(PDF 14KB)
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8 財務局経理部における議会対応に伴う宿泊料金の支出を違法・不当としてその返還を求める件

請求日 平成14年7月30日
結果通知日 平成14年9月25日

請求人の主張

請求人は、財務局経理部が議会対応に伴う宿泊料を支出するにあたり、都の基準では公費負担のできない朝食代を含めて支出していることを違法・不当として、過去1年間の宿泊料の返還を求めた。

監査結果

理由なし(棄却)

関係人調査等から、財務局経理部が支払った朝食代込みの宿泊料金のうち朝食代は素泊料金との差額500円であることが認められる。

財務局経理部が本件宿泊料について朝食代が公費により負担できるものと誤認していたことが精算手続書類等から認められる。

平成14年7月30日に延べ55人分の朝食代2万8,875円(消費税込み)が返納されており、都に損害はないと認められる。

これらのことから、請求人の主張には理由がないものと認めた。

しかしながら、議会対応宿泊料の支出に適切を欠くところが認められたので、財務局に対し、議会対応宿泊料の支出にあたっては、関係規程を遵守し適切に行うよう意見を付した。

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9 自動車税納税済等照合事務の委託契約にかかる経費の支出を違法・不当として必要な措置を求める件

請求日 平成14年8月16日
結果通知日 平成14年10月10日

請求人の主張

請求人は、自動車税納税済等照合事務は道路運送車両法第97条の2に基づく国の事務を都が行っているものであること及び国の納税確認事務に支障をきたすなど多数の弊害があるとして、その委託契約にかかる経費の支出は違法・不当であると主張し、必要な措置を求めた。

監査結果

理由なし(棄却)

先に行った住民監査請求の監査結果(平成13年10月24日付け)において、

① 車両法第97条の2の規定により、国には、自動車税の滞納がないことを証するに足る書面の呈示の有無について確認する義務があるが、延滞金については、本税ではないことから確認する義務はないこと。

② 昭和57年の地方税法改正により、地方税本税を延滞金に優先して徴収することとなり(地方税法第14条の5第1項)、金融機関等の窓口で発行する自動車税本税の領収書によっても車検が行われることとなったため、車検の機会に延滞金を確実に徴収するために必要であるとして、都が本件照合事務を行っていることは妥当な措置であること。

が認められることから、本件照合事務は、延滞金の徴収漏れを防止する地方税法に基づく都の事務であると認められ、地方税法及び車両法相互間に、車検時における延滞金徴収確保の取扱いについて、十分な措置が講じられていない状況にあっては、本件照合事務が車両法第97条の2の規定に基づく国の事務であるとは言いきれないと解されると判断したところである。 現在、この判断を変更する事情はない。

また、本件照合事務は、同一仕様のもとに長期間にわたって継続されていることが認められることから、国の納税確認事務に支障をきたすなどの弊害は生じていないことが推認できる。

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10 前衛生局長の議会対応のための宿泊に伴う経費の支出を違法・不当としてその返還を求める件

請求日 平成14年8月29日
結果通知日 平成14年10月23日

請求人の主張

前衛生局長が議会対応のためにホテルに宿泊した事実がないにもかかわらず宿泊にかかる経費を支出したことは違法・不当である。

監査結果

理由なし(棄却)

健康局の説明及び関係資料の調査から事実関係を確認したところ、前衛生局長は庁有車により帰宅したものの庶務係の議会担当職員(以下「議会担当職員」という。)が宿泊したことが推認でき、前衛生局長が宿泊した事実がないことをもって本件宿泊料の支出を違法・不当とする請求人の主張には理由がない。

なお、宿泊基準に照らすと議会担当職員の宿泊は、要件を満たさないものであるが、平成14年10月15日、本件宿泊料2万7,720円が返納されたことから、都に損害はないと認められる。

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11 国立市立小学校職員にかかる給与の支給を違法・不当として必要な措置を求める件

請求日 平成14年9月13日
結果通知日 平成14年11月6日

請求人の主張

国立市立国立第五小学校(以下「本件小学校」という。)の職員(以下「本件職員」という。)に対して超過勤務命令がないのに超過勤務手当を支給したこと及び給与減額免除申請等の手続に不備があるのに減額しないで給与を本件職員に支給したことは違法・不当である。

監査結果

理由あり(勧告)

平成13年度の超過勤務等命令簿(以下「13年度命令簿」という。)に校長決裁印を、平成13年度の本件小学校の校長及び教頭が押印していないという説明及び本件職員が押印していないという説明についてはいずれも事実を確認できないものの、13年度命令簿に校長決裁印が押印されており、超過勤務等命令簿としての形式は整っていることが確認でき、平成13年度は超過勤務命令及び確認行為が行われたものと推定せざるを得ない。
また、超過勤務命令の上で、平成13年11月分の5回のうち3回に命令権者印がないことは、手続上きわめて問題であるといわざるをえないが、命令権者が超過勤務が行われたことを確認する命令権者確認印が押印されていることから、形式上は命令権者による追認が行われたものとみなさざるをえない。
したがって、本件職員に対する平成13年度の超過勤務等命令簿に基づく超過勤務手当の支給について、違法・不当とまでは認められない。

平成14年5月分の超過勤務命令については命令権者確認印がなく、手続上問題であるが、平成14年度の本件小学校の校長(以下「14年度校長」という。)は命令権者確認印欄に「押すことを忘れた」と説明していることから、超過勤務が行われたことを14年度校長は確認していると推認されるので、違法・不当とまでは認められない。
平成14年6月及び7月分については、命令権者印欄及び命令権者確認印欄がともに空欄となっており、超過勤務命令が行われたとは認められず、平成14年6月及び7月分の超過勤務等命令簿に基づき超過勤務手当を支給したことは違法・不当であり、請求人の主張に理由があるものと認められる。

職務専念義務免除申請簿・給与減額免除申請簿(以下「申請簿」という。)において時系列的に前後している8件の時間内職員団体活動については、仮承認・本承認を行うために必要な書類はすべて整っていることが確認でき、時系列的に前後したことについては事務処理上の問題であると教育庁が説明していることは妥当であると認められる。
したがって、申請簿において記載順序が時系列的に前後していることをもって、減額せず給与を支給したことを違法・不当とする請求人の主張には理由がないものと認める。

該当する3件の時間内職員団体活動については、行事日程表、構成員名簿及び参加票から、職員団体活動が開催されたこと及び本件職員が参加したことが確認でき、本件職員の記入漏れなどの事務処理上の問題であると教育庁が説明していることは妥当であると認められる。
したがって、申請簿における日時欄の記載に一部未記入等の不備があることをもって、減額せず給与を支給したことは違法・不当であるとする請求人の主張には理由がないものと認める。

平成13年度に仮承認した時間内職員団体活動について14年度校長が本承認したこと及び本承認欄に校長印がなかったもの5か所のうち3か所については、手続に若干の遅れが認められるものの、関係書類が確認できることから、違法・不当とまでは認められない。
また、請求人が本承認欄に校長印がないとした5か所のうち1か所については、本件職員が東京都教職員互助会の運営委員会に参加したもので、時間内職員団体活動とは異なり、休暇・職免等処理簿により申請すべきところを、申請簿により申請したものにすぎず、違法・不当とはいえない。
さらに、請求人が本承認欄に校長印がないとした5か所のうち1か所については、監査日現在、本件職員の平成14年度の申請簿の日時欄において平成14年6月11日と記載されているが、請求人が提出した事実証明書からも平成14年6月10日で仮承認を受けたことが認められ、かつ、平成14年6月10日の時間内職員団体活動について関係書類が確認できることから、申請簿を管理者の了解を取らずに書き直したことは問題があるといわざるをえないが、違法・不当とまでは認められない。

参加票により平成14年3月11日に時間内職員団体活動に参加したことが認められるにもかかわらず、申請簿に記載がなく、仮承認を受けていないことから、参加票があるが申請簿に記載がないのに減額せず給与を支給したことは違法・不当とする請求人の主張には理由があるものと認める。

都教育長への勧告

法第242条第4項に基づき、都教育長に対し、次に掲げる措置を講じることを勧告した。

(1)措置すべき事項
適正な手続をとらずに、超過勤務手当を支給したこと及び勤務時間内において職員団体活動を行った時間相当分の給与を支給したことに伴う都の損害額を確定し、その補てんのために必要な措置を講じること。

(2)措置期限
平成14年12月31日

都教育委員会への意見
「国立市立小中学校教職員の勤務時間内職員団体活動を違法・不当として当該時間相当分の給与返還等を求める住民監査請求」の監査結果(平成12年9月29日付12監総第540号)において、国立市教職員が、適正な手続をとらずに、勤務時間内において職員団体活動を行ったことについて勧告を行うとともに、その手続が適正に行われるよう、指導の徹底を図ることを、都教育委員会に対し要望したところである。
にもかかわらず、今回の監査において、超過勤務命令及び職員が勤務時間内において給与を受けながら職員団体活動に従事する場合の職務専念義務の免除及び給与の減額免除の手続が、適切に行われていない事例が認められたことは誠に遺憾といわざるをえない。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律第48条によれば、都教育委員会は市に対し、市の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言又は援助を行うことができるとされていることから、超過勤務命令、職務専念義務の免除及び給与の減額免除の手続が適切に行われるよう、より一層の指導の徹底を図られたい。

教育長が講じた措置(PDF 13KB)
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12 交通局職員が職務専念義務違反行為を行ったにもかかわらず減額せず給与を支給したことを違法・不当としてその返還を求める件

請求日 平成14年11月6日
結果通知日 平成14年12月24日

請求人の主張

都営大江戸線若松河田駅職員(以下「本件職員」という。)が平成14年3月18日及び4月17日に職務専念義務違反行為を行ったにもかかわらず、当該時間相当分の給与を減額しないで支給したことは違法・不当である。

監査結果

理由なし(棄却)

本件職員が定期券や金銭を忘れた乗客に便宜を図るために本件行為により現金化した金銭で2枚のパスネットカード(以下「本件カード」という。)を購入したと説明していることについて判断すると、

ア 本件カードは、表面の印字から平成14年3月18日及び4月17日に同駅で販売されたことが認められる。

イ 交通局が実施した事情聴取によると、同駅職員が、平成14年3月30日に酔客が他駅で購入した乗車券を払い戻すよう申し出た際に発売駅でないと払い戻しができないが、トラブル回避のため本件カードを使用して払い戻しを行った、また、4月24日に残額の足りないカードしか持っていない小学生に不足分を貸与するために本件カードを使用した、と説明している。

ウ 本件カードのうち3月18日販売分のカードについては、カード裏面の印字から2回の使用が認められ、イの説明と使用月日、金額等の点で一致する記載が認められ、4月17日販売分のカードについては、1回も使用されていないことが認められる。

以上のことなどから本件行為により入手した金銭で購入された本件カードは、定期券や金銭を忘れた乗客対応のために使用されたものとする交通局の説明には合理性が認められることから、本件行為は、乗客サービスを目的として行われたものと推認できる。

回収した使用済みパスネットカードについては、廃棄処理することとされているにもかかわらず、本件職員が、本件行為を行ったことは適切を欠くと言わざるを得ない。しかし、本件行為は、定期券や金銭を忘れた乗客に対する原則的な対応が困難な場合の対応を局が定めていないなかで、現場における実際的な対応のために行ったものであり、職務専念義務違反には当たらず、給与減額の問題も生じていない、とする交通局の説明は相当であると認められる。

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13 交通局の局職員等に対する職務乗車証等の作成・配付は利益供与であり当該行為に伴う経費の支出を違法・不当としてその返還等を求める件

請求日 平成15年1月21日
結果通知日 平成15年3月24日

請求人の主張

交通局の局職員等に対する職務乗車証、業務乗車証、モニター乗車証等の作成・配付は利益供与に当たり、当該行為に伴う経費の支出は違法・不当である。

監査結果

理由なし(棄却)

職務乗車証の作成・配付は、局職員が職務上又は通勤において使用することを目的とするものであること及び職務乗車証により都営交通を利用したときは都営交通利用に伴う旅費及び通勤手当を支給していないことが認められ、さらには、局職員に対し職務乗車証の使用目的の周知を行っていること及び職務乗車証の作成・配付により事務の簡素・効率化等が図られるとする交通局の説明は是認しうることから、職務乗車証の作成・配付は、裁量の範囲内であり、職務乗車証が私的利用可能であることをもって、利益供与に当たるとは認められない。
したがって、職務乗車証の作成・配付は利益供与に当たり、職務乗車証の作成・配付に伴う経費の支出を違法・不当とする請求人の主張には理由がないものと認める。

東京都地下鉄建設株式会社等へ派遣している局退職派遣職員に対する業務乗車証の作成・配付については、局退職派遣職員の都営交通利用に伴う通勤手当及び旅費は派遣先会社が負担すべきものであり、交通局が業務乗車証を局退職派遣職員個人に配付することは、適正を欠くと認められることから、局退職派遣職員に対する業務乗車証の作成・配付に伴う経費を支出することは適正でない。
しかしながら、本件経費支出により購入した感熱転写印刷用乗車証(業務乗車証用)のうち局退職派遣職員分の購入経費相当額に、年5分の割合による利子相当額を付した額が返納されていることが認められることから、都に損害はないものと認められる。
したがって、局退職派遣職員に対する業務乗車証の作成・配付に伴う経費の支出を違法・不当とする請求人の主張には理由がないものと認める。

警視庁に対する業務乗車証の作成・配付については、警視庁の犯罪の予防・捜査活動に協力することを目的とするものであることが認められ、警視庁への協力が、都営交通利用客の安全確保等に資するものであることから、警視庁に対する業務乗車証の作成・配付は、東京都電車条例等が定める交通局長の裁量の範囲内であると認められる。
したがって、警視庁に対する業務乗車証の作成・配付に伴う経費の支出を違法・不当とする請求人の主張には理由がないものと認める。

財団法人東京都交通局協力会に対する業務乗車証の作成・配付については、協力会は都営交通のお客様サービスの一翼を担っている団体であり、協力会との密接な協力関係を形成・維持することが、局事業の円滑な運営と発展に寄与するとの交通局の説明は、妥当性を欠くとまでは認められない。
したがって、協力会に対する業務乗車証の作成・配付は、東京都電車条例等が定める交通局長の裁量権の逸脱・濫用に当たるものとまでは認められず、協力会に対する業務乗車証の作成・配付に伴う経費の支出を違法・不当とする請求人の主張には理由がないものと認める。

モニター報告の回答率が低く、モニター業務を適切に履行させるための措置を交通局が講じてこなかったことは、遺憾であると言わざるを得ない。
しかしながら、モニター乗車証の作成・配付は、モニターから交通局事業に対する改善すべき事項等を聴取するため、モニターが都営交通を利用する際に使用することを目的とするものであることが認められ、かつ、モニターとしての報酬を支給していないことから、モニター乗車証の作成・配付について、東京都電車条例等が定める交通局長の裁量権を逸脱・濫用するものとまでは認められない。
したがって、モニター乗車証の作成・配付は利益供与に当たり、モニター乗車証の作成・配付に伴う経費の支出を違法・不当とする請求人の主張には理由がないものと認める。

交通局に対する意見

都営交通事業運営上認められている裁量権の行使に当たっては、常日頃から都民に対する説明責任を十分認識し、交通事業に対する都民の信頼を損なうことのないよう慎重に行うことが求められる。
監査を実施する中で、交通局は、モニター乗車証を廃止するとともに、職務乗車証については、そのあり方の検討を、業務乗車証については、配付対象の見直しを行うとしているが、その際には、都民に誤解や疑念を与えることのないよう、適切に行われたい。
なお、既に局退職派遣職員に対し配付している業務乗車証について、適切な対応を図られたい。

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14 警視庁が発注する信号機等工事などの契約に際し談合があったとして談合による損害の返還等を求める件

請求日 平成15年3月27日
結果通知日 平成15年5月22日

請求人の主張

公正取引委員会が独占禁止法第48条第2項に基づき平成15年2月20日、17社に対し排除勧告を行った交通信号機等工事及び平成14年7月15日、74社に対し排除勧告を行った道路標識設置工事等において、談合行為を行った各業者に対し、警視庁が損害賠償請求を怠っていることは違法・不当であるとして、損害補てん等の必要な措置を求めた。

監査結果

理由なし(棄却)

交通信号機等工事及び道路標識設置工事等の各取引分野について、公取委は談合の基本ルールの合意があったことを認定しているものの、監査日現在、課徴金納付命令は行われておらず、公取委は個別契約について談合が行われたことを認定するまでには至っていないと推認できる。
 したがって、公取委が課徴金納付命令を行い、談合の行われた個別契約が確定した後、速やかに賠償請求を行うとする警視庁の説明は妥当なものと認められる。

警視庁への要望

入札談合等不正行為の防止に努めるよう要望した。

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