平成15年度行政監査報告書

東京都監査委員は、地方自治法第199条第2項の規定に基づき、毎年、事務事業監査及び行政監査を実施しています。その結果がまとまりましたので、本日、第一回都議会定例会に「平成15年度事務事業・行政監査報告書」を提出しました。

「平成15年度事務事業・行政監査報告書」本文へ(PDF 292KB)

事務事業監査

都の事務事業のうち各局にまたがる共通のテーマについて、横断的に捉え、主として経済性・効率性及び有効性の観点から監査するものです。

今回は、近年、横断的に検証・評価したことがなく、これまで十分な見直しが行われてきたとは言い難い「調査研究委託」の実施状況をテーマに選定し、監査を実施しました。

平成12年度から14年度の3年間に行われた、都全体で1,755件の調査研究委託を対象として、必要性、実施方法、結果の活用などの観点からチェックを行いました。

監査対象局……建設局ほか23局
実地監査期間……平成15年10月6日から11月18日まで

行政監査

都の事業のうち特定の事業を選定し、主として、有効性、効率性等の観点から具体的に検証し、評価するものです。

今回の行政監査では、精神障害者社会復帰に関する施策から3事業、水域環境の保全に関する施策から3事業について、事業別監査を実施しました。

監査対象局……健康局ほか3局
実地監査期間……平成15年10月7日から11月18日まで

1 事務事業監査報告の概要

(1)調査研究委託の現状(主な特徴)

  • 調査委託の年度別の状況について見ると、毎年度、件数にして600件、金額にして60億円から80億円の調査が実施されている。
  • 局別に金額の多い順に見ると、最も多いのは建設局で全体の22.9%である。続いて港湾局、下水道局、環境局、都市計画局となっており、この5局で66%を占めている。
  • 目的別に見ると、「現況実態調査」のためとするものが最も多く約4割を占めている。
  • 予算措置の時期について見ると、当初予算に措置されず、年度途中に流用、充当等の措置で実施したものが約3割を占めている。
  • 契約種別の状況について見ると、例外的な契約方法である特命契約が、全体の3分の1程度と比較的多く見られる。
  • 委託の成果品の公表状況について見ると、公表しないとしているものの割合は、33.4%であり、その理由として、プライバシー保護を挙げている。

(2)総括的な結果

  • 委託の現状を見ると、計画的な執行に疑問のある状況や成果物の公表が消極的と思われるものが見られた。
  • 委託の必要性について疑問のあるもの、調査の方法や進行管理が適切でないもの、成果物の利・活用が充分でないもの、契約の方法や積算が適正でないものが見受けられた。
  • 具体的に各局に対して早急に改善を求めた指摘事項等は18件である。また、平成14年度の不経済支出等の額は、約1億7千万円と見込まれる。
  • 各局がバラバラに委託しているので、今後は、調査研究委託の執行を、全庁的に検証・評価しながら、一元的に管理する体制を整備することが望まれる。

(3)個別の指摘、意見・要望事項

指摘、意見・要望事項は本文にそれぞれ記載されておりますが、主な事例は次のとおりです。

生鮮食料品等流通実態調査の調査年次を見直すべきもの

生鮮食料品等流通実態調査は、卸売市場整備計画改定の資料とするため行われているが、3年ごとの調査のため、5年ごとに作られる整備計画の計画作成年次との整合性が図られておらず、今回の流通調査は、適切な活用となっていない。流通調査の調査年次を、整備計画に沿ったものに変更するよう見直すべきである。

中央卸売市場 報告書本文 P.25

有効性・経済性の観点から、調査結果を適切に活用できるよう求めたもの

(参考)流通調査及び整備計画の実施状況

  生鮮食料品等流通実態調査 東京都卸売市場整備計画
実施及び作成年度 平成16年度 平成17年度
平成13年度
平成10年度 平成13年度

完成させた試作器を有効に利用すべきもの

2か年による研究開発委託により完成させた「配水本管用漏水検知器」(以下「試作器」という。)の対応については、配水本管及び配水小管について、フイールド試験を重ね、そのデータを蓄積することにより、試作器の更なる改良を目指すこととしている。しかし、配水小管については、フイールド試験が全く行われておらず、配水本管についてもわずか1件のみとなっている。

多額の経費を要して完成させた試作器を、有効に利用すべきである。
水道局 報告書本文 P.32

有効性の観点から、多額の経費をかけ開発した試作器を有効に利用し、改良に結びつけるよう求めたもの

(参考)2年間の契約金額(単位:円)

年度 契約金額
平成14年度 27,331,500
平成13年度 13,965,000
合計 41,296,500

調査委託費用について応分の負担を国に求めるべきもの

指摘、意見・要望事項は本文にそれぞれ記載されておりますが、主な事例は次のとおりです。

国土交通省の依頼を受け、交通事故調査委託を行っており、それにより得たデータを国へ送付しているが、国はそれを取りまとめて一つのデータベースとしている。しかし、現状では、当該調査委託により都が得るメリットは少なく、今後とも継続せざるを得ないならば、委託費用について、国に応分の負担を求めるべきである。

建設局 報告書本文 P.34

経済性の観点から、国に対して応分の負担を求めるべきとしたもの

(参考)交通事項調査委託契約額(単位:万円)

年度 平成14年度 平成13年度 平成12年度
契約額 1,448 1,680 1,933

契約方法について見直しを行うべきもの

東京消防庁は、地震災害の防止に関する調査研究委託について、「過去の調査研究と密接に関連している」、「実績がある」という理由で、昭和59年度から、ほぼ一貫して特命随意契約しているが、契約方法について見直しを行うべきである。

東京消防庁 報告書本文 P.39

合規性の観点から、特命随意契約の方法について問題としたもの

(参考)地震災害の防止に関する調査研究の状況(単位:千円)

年度 件名 契約金額 受託者
平成14年度 消火活動の最適化に関する調査 20,950
平成13年度 市街地火災の延焼拡大及び抑止効果の解明に関する調査 19,000
平成12年度 地域活動アセスメントシステムの調査 19,623

主任調査員等の労務単価の積算を適切に行うべきもの

主任調査員等の労務単価については、局で積算基準を有していないため、関係業者から下見積りを徴するなどにより、積算しているが、同程度の業務を行う他局の労務単価と比較すると、高額なものとなっている。局は経済性などを十分考慮して、労務単価の積算を適切に行うべきである。

福祉局 報告書本文 P.40

経済性の観点から、割高な労務単価の積算を是正するよう求めたもの

(参考)主任調査員の労務単価(単位:円)

年度 福祉局単価 他局の単価
平成14年度 100,000 51,600
平成13年度 98,000 52,100

2 行政監査報告の概要

(1)監査対象事業(6事業)

精神障害者社会復帰に関する施策

  • 精神障害者社会適応訓練事業
  • 精神保健福祉センターにおける入所生活訓練事業
  • 精神障害者通院医療費公費負担

水域環境の保全に関する施策

  • 水質環境測定業務
  • 河川・海面清掃事業
  • 放置船舶対策

(2)意見・要望事項

意見・要望事項(6件)は本文にそれぞれ記載されておりますが、主な事例は次のとおりです。

河川・海面清掃事業について

河川清掃及び海面清掃は、環境局と港湾局がそれぞれ各公社に委託して独自に実施しているが、清掃船の相互乗り入れ等を図ることによって、両清掃のより効率的な執行が期待できる。両局は、船舶の特性・機能、清掃区域等を勘案した効率的な執行方法について、今後、具体的に協議していくことが望まれる。

環境局・港湾局 報告書本文 P.63

効率性の観点から、河川・海面清掃の実施方法について検討を求めたもの

(参考)河川・海面清掃の委託状況(単位:千円)

区分 委託先 船舶数 平成14年度委託料
河川清掃 環境整備公社 12隻 406,458
海面清掃 埠頭公社 6隻 216,620
「平成15年度事務事業・行政監査報告書」本文へ(PDF 292KB)