平成16年行政監査報告書

監査委員は、本日の都議会第一回定例会に「平成16年行政監査報告書」を提出しました。 平成16年は、「特命随意契約」と「都立図書館サービス」をテーマとして監査を実施しました。

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1 特命随意契約について

特命随意契約は、競争入札を行わず相手を特定して行う契約です。競争原理が働きにくいことから、地方自治法上例外的な契約方法とされていますが、 現実には、都における契約件数の約2割※を占めています。
(※平成15年度に本庁で締結した契約件数に対する割合)

平成15年度に都で締結した特命随意契約7,438件(約2,630億円)のうち、1,888件(約1,708億円)を抽出して監査を行いました。

今回は、この特命随意契約の事務が適正に行われているかについて検証しました。

監査の結果

業者からの見積額を十分精査しないまま契約の予定価格を積算している事例や、現在は競争入札が可能であるのに、 長年にわたり特命随意契約を継続している事例などがありました。

それらに対して、19件の指摘と5件の意見・要望を行いました。不経済支出等の金額は、約1億1,000万円と見込まれます。

今後、職員のコスト意識の向上や、組織的なチェックに一層努めるよう求めました。

(1) 特命随意契約の現状

  • 本庁における平成15年度の特命随意契約の件数は7,438件であり、総契約件数のうちの20.1%を占めます。
  • 特命随意契約とした理由は、契約相手の「専門性」や「過去の実績」としたものが約80%を占めます。
  • 特命随意契約の継続の状況について見ると、前年度以前から継続しているものが全体の38.2%、 その継続の年数を見ると工事、委託及び購入等では、5年を超えるものが53.5%となっています。

(2) 主な事例

ア  予定価格の積算を適正に行うべきもの

局は、地震発災時に給水対策本部の活動を支援するための情報システムについて、運用管理の委託を特命随意契約により締結している。 しかしながら、予定価格の算出内訳を見ると、
(1)機器等使用料のリース料率を誤ったため、約429万円を過大に積算し、
(2)データーベースソフトサポートの単価を誤ったため、約392万円を過小に積算した。
この結果、過大、過小の相殺をしても、契約金額が正しい予定価格を上回っていることから、局に対して、予定価格の積算を適正に行うよう求めた。

指摘事項 水道局 報告書本文 P.16

イ  駅舎照明設備点検清掃委託に係る契約方法を見直すべきもの

局は、本件契約(推定総金額約1億3,000万円)の特命理由について、 「乗降客の安全確保や列車運行上の安全確保に十分配慮する必要があるため、地下鉄施設特有の作業状況、作業内容等のノウハウを蓄積している当該業者は、 安全かつ確実な作業を行える」としている。しかしながら、作業の一部について見ると、当該業者以外でも安全かつ確実な作業が可能であると判断され、 本件契約の全ての作業を特命随意契約とする理由は存しない。

この結果から、局に対して、駅舎照明設備点検清掃委託に係る作業内容等を再調査し、特に安全を確保する面から必要と認められる部分を除き、 契約方法の見直しをするよう求めた。

指摘事項 交通局 報告書本文 P.24

ウ  学力検査問題等の印刷に当たり競争性を採り入れるなど契約方法の見直しを行うべきもの

本件委託契約は、いずれの庁も特命理由について、(1)学力検査問題の取扱いが極秘である、(2)当該業者は学力試験問題などの印刷に実績がある、などとしている。しかしながら、機密の保持に最大限留意すべきことを認めたとしても、同様の厳しい条件で競争により契約を行の業者でも対応できると思われる。また、過去に契約実績があるとの特命理由だけでは十分ではなく、長年にわたり契約方法の見直しを行っていないのは適切ではない。
この結果から、庁に対して、競争性を採り入れるなど契約方法の見直しをするよう求めた。

指摘事項 教育庁、東京消防庁 報告書本文 P.28

エ  特命随意契約を見直し競争により契約を行うべきもの

局は、軽油引取税関係様式の購入契約(契約額:1,038万7,190円)における特命理由として、 (1)種類が多い、(2)様式改正がたびたび行われ、印刷では間に合わない場合がある、(3)数量、配送を考慮すると、当該業者から購入した方が経済的、効率的であるなどとしている。

しかしながら、当該様式の取得単価は購入より印刷による方が経済的と見込まれること、また、様式改正は、平成11年度以降は大幅な改正がなく印刷で対応しても間に合うと考えられることから、競争による契約とすべきである。 この結果から、局に対して、所要数量、取得単価等を精査し、経済的な方法により契約するよう求めた。

指摘事項 主税局 報告書本文 P.31

オ  羽田空港支所等の賃借について貸主と直接契約すべきもの

局は、東京観光情報センターの管理運営業務などの委託(契約金額約2億1,500万円)について、特命随意契約により締結している。契約の相手方である財団法人東京観光財団は、そのうち一部の業務を再委託により行っているが、再委託業者からのみ見積書を徴し契約を締結しているため、競争性が確保されていない。また、羽田空港支所及び京成上野支所の賃借については、財団法人に委託せず、局が直接賃借すべきものであり、管理費等の経費約97万円が不経済支出となっている。

この結果から、局に対して、財団法人の再委託に当たり競争性を確保するよう指導、監督するとともに、羽田空港支所及び京成上野支所の賃借を直接行うよう求めた。

指摘事項 産業労働局 報告書本文 P.36

主な事例

ア  広域的自治体の図書館としてのサービス向上に向けた取組の強化に努めるべきもの

都立図書館は、3館で相互に機能を分担し、広域的自治体の図書館として高度・専門的なサービスの提供に努めている。
図書館利用者を取り巻く環境は大きく変化しており、アンケートの実施などにより、利用者のニーズを的確に把握するとともに、それに基づき、経営指標を選定し、数値目標を設定するなど、広域的自治体の図書館としてのサービス向上に向けた取組の強化に努めるよう求めた。

意見・要望事項 教育庁 報告書本文 P.56

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