平成18年行政監査報告書

東京都監査委員は、本日の平成19年第一回都議会定例会に、「平成18年行政監査報告書」を提出しました。

「平成18年行政監査報告書」全文へ(PDF 279KB)

テーマ1 都の土地及び建物の管理について

1 監査の概要

都は東京の再生と都民サービスの充実に向けて、様々な分野で事業を展開しています。事業を進めていく上では、道路、公園などの事業用地や庁舎などが必要ですが、こうした土地、建物は都民共有の貴重な財産です。

都は、平成18年4月から新たな公会計制度(複式簿記・発生主義会計)を開始しました。事業運営に必要となる土地、建物等についても、管理の適正化や運用の効率化などを図っていくことがこれまで以上に求められています。

今回の監査では、平成17年度末に各局が所有し、又は賃借している土地及び建物を対象とし、19局64部60事業所について、土地及び建物の「管理」「有効活用」「安全対策」を中心に監査を行いました。

【監査の結果】
都営住宅の建替事業(高層化)に伴い生じた余剰地が更地のまま活用されていない事例や、レインボーブリッジにある2つの展望室が利用者の減少により6年以上閉鎖されたまま活用されていない事例など19件の指摘、8件の意見・要望を行いました。

【まとめ】
土地や建物などの公有財産は、多くの都民が利用する共有の財産であり、

  • 不法占拠など財産の不当な侵害には、組織をあげて迅速な解決に取り組むこと
  • 未利用地や遊休施設等の有効活用には、全庁的な視点で取り組むこと
  • 利用者の立場に立って安全対策に取り組むこと

などを求めました。

2 主な事例(要旨)

(1)不法占拠の解消に速やかに取り組むべきもの

建設局第六建設事務所が管理している河川管理通路の一部(約610平方メートル)が、植木鉢や資材等によって不法に占拠され、堤防の安全確認作業などの妨げになっているにもかかわらず、占拠の解消に向けた取組が進められていない。

建設局 指摘事項(報告書本文20ページ)

(2)財産管理業務を効率的に行うべきもの

交通局は、土地、建物など公有財産の管理に関して、「東京都交通局公有財産管理システム」を平成18年4月から稼動させ、事務処理を行っている。 しかし、システムの運用状況を見たところ、使用許可や貸付けに必要な最新の情報が入力されておらず、従前どおりの管理台帳等で管理業務を行っているなど、財産情報の共有化及び台帳管理事務の効率化等が図られていない。

交通局 指摘事項(報告書本文27ページ)

(3)建替事業により生じた用地の活用方針を検討すべきもの

都市整備局は、老朽化した都営住宅の建替事業を順次行っており、これに伴い、住宅が集約化・高層化されること等によって、余剰地が生じている。 これらの用地の活用状況について見たところ、更地となっているが活用されていない事例(合計で約2万7,500㎡)が認められた。 局は、都営住宅の建替事業により生じた用地について、長期的利用に向けた活用方針の作成及び用地の一時的利用も含めた活用方策について検討されたい。

都市整備局 意見・要望事項(報告書本文37ページ)

(4)展望室の利活用に係る方針の策定について検討すべきもの

港湾局は、レインボーブリッジの橋りょう附帯施設について、平成5年8月から供用を開始し、管理している。 この施設の利用状況について見たところ、アンカレイジ(※)の中にある2つの展望室(合計で約2,230㎡)については、利用者の減少により、平成12年4月から6年6か月以上、閉鎖されている。 局は、広く外部から意見を聴取するなど、新たな視点を取り入れながら、展望室の利活用に係る方針の策定について検討されたい。

※ 橋のケーブルの両端を固定するコンクリートのおもし

港湾局 意見・要望事項(報告書本文41ページ)

(5)利用者の安全確保に努めるとともに、落下防止策を早急に講じるべきもの

建設局東部公園緑地事務所庁舎は、平成2年7月に建設され、1階はレストラン(財団法人東京都公園協会が管理)、2階及び3階は、事務室として使用している。
しかし、庁舎の管理状況について見たところ、庁舎の壁面タイルが落下している状況が認められ、再度落下する危険性があることを認識していたにもかかわらず、具体的な落下防止策が講じられていない。
建設局 指摘事項(報告書本文43ページ)

「平成18年行政監査報告書」全文へ(PDF 279KB)

テーマ2 病院における収入管理について

1 監査の概要

病院経営本部は、都立5病院(府中、駒込、広尾、大塚、墨東)に病院情報システムを導入し、診療記録の作成・保管を行うとともに、サブシステムの医事会計システムにより診療報酬の収入管理を行っています。(その他の病院は、単独の医事会計システムで収入管理している。) 都立病院の経営改善には、診療報酬を確実に請求し、収入することが重要であり、そのために収入管理を適切に行う必要があります。
今回の監査では、病院が医事会計システムを活用して、診療報酬を正確かつ効率的に請求、収入しているか評価することを目的として監査を行いました。また、病院の情報システムは、患者の診療情報を取り扱うものであり、セキュリティー確保の必要性が極めて高いことから、システムが適切に運用管理されているかについても監査しました。

【監査の結果】

システムが必要な機能を備えていないために、診療報酬に係る未収金の情報が常時把握できていない事例や、システムは必要な機能を備えているが有効活用せず、従前どおり手作業で事務処理を行っている事例など30件の指摘を行いました。

【まとめ】

効率的な病院経営には、なお一層努力が必要です。特に収入管理については、さらに改善の必要があり、

  • 診療報酬の請求・収入に係る事務の効率的な執行
  • 情報システムの適切な運用管理
  • 利用者の立場に立って安全対策に取り組むこと

などを求めました。

2 主な事例(要旨)

(1)システムを改修し、未収金に係る状況を常時把握すべきもの

病院は、患者負担金に係る未収金について、当初発生額、徴収努力を行うべき債権などの件数・金額を把握していなかった。

未収金管理は医事会計システム(※1)により、また滞納債権の管理は未収金管理システム(※2)により行われていることから、これらシステムが保有する情報を利用すれば、未収金の債権数・金額を容易に集計できるが、いずれのシステムもその機能を備えていない。 本部は、システムを改修し、未収金に係る情報を常時把握する必要がある。

※1 診療報酬の計算、請求を行うシステム

※2 医事会計システムのサブシステムで、医事会計システムが保有している未収金の情報を取得して、督促状の作成や督促経過の記録を行うなどの機能を持つシステム

病院経営本部 指摘事項(報告書本文67ページ)

(2)徴収事務が効率的、効果的なものとなるよう適切な指導等を行うべきもの

病院における個人未収金の徴収事務について見たところ、滞納されている患者負担金の徴収について、明確な理由がないまま、徴収努力を行っていないなどの適切でない事例が多数見受けられた。 このため、本部は、回収可能性に着目した債権分類の見直しと具体的な基準の設定、事務処理手順の標準化などを行い、効率的、効果的な徴収について適切な指導を行う必要がある。

病院経営本部 指摘事項(報告書本文67ページ)

(3)個人未収金管理の事務処理手順を見直すべきもの

未収金管理の事務処理について見たところ、未収金管理システムで行える事務を、従前のまま手作業で行っている事例が見受けられた。

ア システムには、督促状等の発送リスト作成機能があるが、分割納入中の患者にも一律に督促状等を作成してしまうためとして、この機能を用いていない。

イ システムには、滞納者ごとの未収金整理簿等の作成機能があるが、墨東病院及び府中病院ではこの機能を利用せず、手書きで作成している。また、大塚病院では手書きで作成した上に同内容をシステムに入力している。

本部は、システムに合わせて事務処理手順を見直し、効率的な事務を行うよう病院を指導するべきである。

病院経営本部 指摘事項(報告書本文69ページ)

(4)部門システムに係る管理を行うべきもの

部門業務のシステム化については、病院の経営判断であるとして病院が独自に行うこととなっているが、すべての病院において、情報化計画を作成せず、情報システム導入の方針が明らかでない。このため、導入による経営上の効果についても検証できない状況となっている。

本部は、病院が情報化計画を策定するよう、病院を適切に指導されたい。

病院経営本部 指摘事項(報告書本文77ページ)

「平成18年行政監査報告書」全文へ(PDF 279KB)