平成22年行政監査報告書
東京都監査委員は、本日の平成23年第一回都議会定例会に、「平成22年行政監査報告書」を提出しました。
テーマ 債権管理について
監査の目的
公平かつ効果的かつ効率的に債権管理を行っているかを検証しました。
監査項目、観点及び手続
次の観点に基づいて、特に標準的な監査手続を定めた上で、 標準監査手続に沿って、債権ごとに検証方法を具体化し、債権管理に係る業務が適切であるかを、債権別に評価しました。
監査項目 | 観点 | |
---|---|---|
収入管理 | 調定・収入 情報の保持 |
漏れなく正確に調定し、収入を把握しているか 債権に係る情報を正確に保持しているか |
滞納整理 | 督促 催告・交渉 法的措置等 |
督促状を速やかに公平に発布しているか 効果的に交渉し、回収の可能性を判断しているか 強制執行などにより効果的に回収しているか |
監改善を求めた事項(P.7)
監査の結果、次のとおり、改善を求めました。
○ 収入管理について
システムを利用して収入管理を行う場合には、調定金額、収入金額等の債権情報を正確に保持できるシステムにより管理する必要がある。
○ 滞納整理について
① 督促及び催告などの徴収努力を公平かつ効果的に行う。
② 必要な徴収努力を行ってなお納付されないときは、徴収努力の過程で把握した債務者等の状況に応じて、分割納付や履行期限の延長などを行う。
③ 徴収努力の過程で把握した債務者等の状況から回収の可能性を判断し、その上で、
(ⅰ)原則として、回収可能性がないと認められず、かつ、一部納付もしないなど納付の意思を示さない者に対しては、財産調査を行った上で、強制執行や訴訟などの法的措置を執る
(ⅱ)回収可能性がないと認められる場合には徴収努力を停止する
など、公平かつ効果的、効率的に債権を管理する必要がある。
監査の結果(P.6)
監査した債権の管理状況について総じて言えることは次のとおりです。
【収入管理】
調定・収入
使用許可などに基づき適正に収入管理をしていました。
情報の保持
一部に、システムにより保有・管理している債務者情報、調定金額、収入金額等を、履歴を残さず変更・削除できるため、
債権情報を正確に保持できる保証がないシステムが認められました。
【滞納整理】
督促
多くは適正に督促状を発布していましたが、一部で
○ 収入未済確定後、督促状を速やかに発布していませんでした。
催告・交渉
催告書、電話、臨戸等の催告・交渉をしていましたが、右の事例のように
○ 催告・交渉を効果的に行っていない
○ 回収可能性の判断を行っていない
と認められた債権がありました。
法的措置等
財産調査、強制執行・訴訟等の法的措置を一部で行っていましたが、
○ 全般的には法的措置等を積極的に行っていませんでした。
個別債権の検証事例(要旨)
霊園管理料(建設局)P.118~129
都立霊園の埋蔵施設等の使用者から、年度ごとに徴収するもの
収入管理(本文表4)P.120~121
調定・収入
○ 使用許可の状況を霊園管理システムに入力し、これに基づき管理料を適正に調定し、収入状況を把握している。
情報の保持
○ システムが保有する調定・収入情報を直接書き換え、変更履歴を残さない
システムであり、削除・改ざんの防止ができない。
滞納整理(本文表6)P.122~124
督促
○ 督促状を速やかに発布していない。
催告・交渉
○ 全ての滞納者に年1回、催告書を発布しているものの、発布時期が遅く、
- 一部の滞納者に対しては、年1回、電話による催告などを行っているが、催告の内容が一律かつ画一的である
- その他の滞納者に対しては、催告・交渉を行っていない
など、滞納者の個別の状況に応じて文書・電話・臨戸を適切に組み合わせた
効果的な催告・交渉を行っていない。
○ 霊園管理システムにより、滞納整理業務を管理しているが、
- システムでは督促状・催告書の発布履歴を記録できない。
- 電話催告の内容をシステム外で年度ごとに記録している
など、催告・交渉の経緯を、滞納者ごとの時系列に記録・管理していない。
この結果、滞納者との交渉経緯を把握できず、効果的な催告・交渉を行えない。
⇒ 債務者個別に交渉等を行っていないため、回収可能性を判断できない。
法的措置等
○ 回収可能性を判断できていないため、
- 財産調査・法的措置を行えていない。
- 回収困難であっても徴収停止に至っていない。
○ 滞納者の状況に応じた催告・交渉など適切な徴収努力を行わず、回収の可能性を判断しないまま、画一的、形式的な事務処理により、時効期間の経過に伴い不納欠損を行っている。
⇒ 債務者間の公平を確保できていない。