平成18年工事監査報告書
東京都監査委員は、本日の平成19年第一回都議会定例会に、「平成18年工事監査報告書」を提出しました。
監査の概要
都が平成17年度に締結した100万円以上の工事等1万3,957件(約8,818億円)のうち、1割強に当たる1,436件(約2,481億円)を抽出し、計画、設計、積算、施工などについて技術的な面等から監査を行いました。
【監査の結果】
合計14局に対して、39件の指摘、4件の意見・要望を行いました。指摘した金額の合計は、約1億5,423万円となっています。
次のような事例について改善を求めました。
- 設計・積算(単価設定及び数量算出等)において、桁の間違いのほか、積算基準の取り違えや業者からの見積りの安易な採用などが認められた。
- 危険が伴う高所作業や酸欠懸念場所での作業の安全確保など、請負者が行う管理業務について、都が請負者の指導、監督を適切に行っていない。
- 技術の知識や経験が十分でない事務職員等が、諸経費計算を誤ったり、現場の状況を十分把握してないなど、設計、施工の基本的事項が適切に行われていない。
【まとめ】
今後、道路や河川などの維持更新や、都市基盤の着実な整備のため、技術職員の役割はますます大きくなります。
そのため、各局において、
- チェック体制や監督体制の強化に努めること
- 事務職員等専門外職員への技術支援体制の強化を図ることなど、再発防止に組織をあげて取り組むこと
を求めました。
主な事例(要旨)
設計
(1)内装工事における間仕切壁仕様の選定を適切に行うべきもの
警視庁小岩警察署庁舎(H16)改築工事(その2)ほか1件における、内装工事の軽量鉄骨下地間仕切壁について見ると、証拠品保管庫やトイレなどに遮音性能の高い割高な仕様の間仕切壁が用いられている。
しかし、同間仕切壁の仕様は、庁の設計標準において遮音性能を確保する必要がある取調室などに用いるものとなっている。
このため、証拠品保管庫などに同仕様は不要なことから、積算額約595万円が過大なものとなっている。
警視庁 指摘事項(報告書本文10ページ)
積算
(2)泥土圧式推進工における排泥管設置撤去費の積算を適正に行うべきもの
水道局 指摘事項(報告書本文18ページ)
足立区保木間一丁目地先から小右衛門給水所間送水管(1,600㎜)トンネル内配管及び立坑築造並びに送水管(1,600㎜)新設工事における泥土圧式推進工の排泥管設置撤去費(地上・立坑、φ150㎜、延長約41m)の積算について見ると、(社)日本下水道管渠推進技術協会積算要領に基づき算出しているが、100m当たりの単価を誤って1m当たりのものとしたため、積算額が100倍となっている。
このため、積算額約2,326万円が過大なものとなっている。
(3)フリーアクセスフロア工事における局基準の共通費について検討すべきもの
下水道局 意見・要望事項(報告書本文25ページ)
葛西水再生センター汚泥処理棟設備再構築に伴う建設工事における共通費の積算について見ると、本件配電盤室に使用しているフリーアクセスフロアの工事費は、局基準に明確な規定がないため、共通費の補正対象としていない。
ところで、OAフロアの工事費は現場での作業が少ないなどの理由から、局基準では共通費の補正対象とし、共通費の低減を行うこととしている。
しかし、本件フリーアクセスフロアは、OAフロアと同様のものであるにもかかわらず、共通費の補正対象とせず、低減していないのは適切ではない。
仮に、フリーアクセスフロア工事を共通費の補正対象とすれば、積算額約104万円が縮減できるものである。
施工
(4)高所作業における安全性をより高めるため、手すり先行工法による枠組足場を適正に行うべきもの
建設局 指摘事項(報告書本文27ページ)
局の工事では、高所作業における墜落・転落の防止対策の一環として、平成16年7月1日以降、枠組足場を設置する場合において、手すり先行工法を採用することとしている。
南多摩尾根幹線の街路築造に伴う横断通路設置工事及び現場打L型擁壁工事の施工状況について見ると、足場工は手すり先行工法による枠組足場で行われていない。
このことは、高所作業の安全性をより一層確保するうえから、適正でない。