平成19年工事監査報告書
東京都監査委員は、本日の平成20年第一回都議会定例会に、「平成19年工事監査報告書」を提出しました。
監査の概要
【監査の結果】
合計15局に対して、38件の指摘、3件の意見・要望を行いました。指摘した金額の合計は、約2億4,375万円となっています。
【重点監査事項】
工事事務の各段階において、誤りを未然に防止するためのチェック体制(「工事事務に関するチェック体制」)を、監査した全案件について検証しました。
- 多くの工事案件において、チェックにより誤りを事前に発見するなど一定の効果を挙げていました。
- 一方で、チェック者が専門外の場合には誤りを見抜けない状況などが見られました。
【まとめ】
今後は、都市機能の更新を効果的、効率的に進めるため、都庁全体の技術力の維持・向上と、工事事務の誤りの対策強化に向けた取組が必要です。
そのため、各局において、
- 技術研修や技術の継承に着実に取り組むこと
- 事務職員等専門外職員への部所を超えた技術支援体制の拡充を図ること
など、再発防止に組織をあげて取り組むことを求めました。
主な事例(要旨)
設計
(1)設備工事に使用するケーブルの環境物品等への転換促進について検討すべきもの
都は、平成18年度東京都環境物品等調達方針(公共工事)において、ハロゲンや鉛などを使用しないEM電線及びEMケーブルを、特に重点的に使用の推進を図る特別品目として指定している。
ところで、局の設備工事におけるケーブルの使用方針について見ると、EMケーブルと従来型ケーブルとを混用した場合は、リサイクルが困難になるとして従来型ケーブルを使用することとしている。
その結果、平成18年度のケーブル敷設を伴う設備工事159件のうち83件において、環境負荷の大きい従来型ケーブルが使用されている状況となっている。
しかしながら、EMケーブルと従来型ケーブルを混用しても、リサイクルに際して大きな支障はない。
このため、今後の工事においても従来型ケーブルを使用し続けることは、新たな環境負荷を次世代に残すこととなり、適切なものではない。
水道局 意見・要望事項(報告書本文9ページ)
積算
(2)泥土圧式推進工における排泥管設置撤去費の積算を適正に行うべきもの
馬込西二号幹線の築造工事において、ルート変更に伴いシールドマシンを設計変更する際の機械器具損料の積算について見ると、同損料は、ジャッキ1台分の損料単価に供用日数、使用台数を乗じたものとすべきところ、誤って、さらに使用台数を乗じて算出し計上するなどしている。
また、シールドジャッキ1台分の損料単価は、局で定めた損料単価があるにもかかわらず、誤って、割高な業者からの見積もりによる単価を用いている。
このため、積算額約9,248万円が過大なものとなっている。
下水道局 指摘事項(報告書本文18ページ)
(3)船舶建造の一般管理費等の計上について検討すべきもの
東京都小笠原水産センター漁業調査指導船「興洋」建造における一般管理費等の積算について見ると、局は船舶建造修理に必要な積算基準を定めていないため、港湾工事に適用する港湾請負工事積算基準(国土交通省)等を参考に算出し計上していることが認められた。
しかしながら、契約内容は船舶の建造であり、港湾工事と異なるため、一般管理費等は船舶および機械製造修理請負工事積算基準(国土交通省)に基づいて定められている東京都港湾局基準を参考に積算することが適切である。
仮に、同基準に基づき算出すると、積算額約4,479万円が縮減できるものである。
島しょ(産業労働局) 意見・要望事項(報告書本文23ページ)
施工
(4)高所作業の安全管理について請負者を適切に指導、監督すべきもの
上恩方生活環境保全林整備工事において、谷止工等の仮設足場の施工状況について見ると、高所作業からの墜落災害を防止するため、労働安全衛生規則に定められている手すりの設置や安全帯の使用など必要な措置が講じられていないことが認められた。
このような状況は、作業員の墜落事故につながりかねない大変危険なものである。
事故を未然に防止するためには、関係法令を遵守した施工計画を定め、安全対策を確実に実施させることが不可欠である。