平成21年工事監査報告書

東京都監査委員は、本日の平成22年第一回都議会定例会に、「平成21年工事監査報告書」を提出しました。

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監査の概要

都が平成20年度に締結した100万円以上の工事等1万4,336件(約1兆1,541億円)のうち、1割強に当たる1,716件(約3,469億円)を抽出し、計画、設計、積算、施工などについて技術面等から監査を実施しました。

【監査の結果】
合計14局に対して、33件の指摘、2件の意見・要望を行いました。指摘した金額の合計は、約7,943万円となっています。
【重点監査事項「安全への取組み」】
監査した全案件について、計画、設計、施工等の各段階において、工事の安全への取組みが適切に行われているかについて検証しました。

その結果、指摘件数は14件で、高所作業等において、必要な墜落防止等の安全措置が講じられていない事例等が見られました。

【まとめ】
各局において、チェック体制の整備強化や適切な監督体制の整備を図ること、知識や経験が十分でない若手職員等への部所を越えた支援体制の整備拡充など、組織を挙げた取組みを求めました。

主な事例(要旨)

設計

(1)改修工事における内装の仕様設定について検討すべきもの

若林単身待機宿舎耐震改修工事において、寮室床仕上げ材の複合フローリングについて見たところ、庁で統一した仕様が定められていないことから、標準的なものに比べ割高なものを特記仕様書で指定している。
 しかしながら、内装について標準的な設計仕様を設定することで、より経済的に設計することが可能となり、また、設計の効率化を図ることができる。
 仮に、定期刊行物等に掲載されている、複合フローリングの標準品で設計を行うと、積算額約303万円が縮減できる。

【意見・要望事項】 東京消防庁 (報告書本文12ページ)

(2)LAN機器収納ラックの仕様を適切に設計すべきもの

都立拝島高等学校ほか11校の校内LANその他設備工事において、LAN機器を収納するラックの仕様について見たところ、周辺機器類や今後増設されるであろう機器を収納する目的で大きいタイプのラックを採用している。
 しかしながら、教育庁が定めた、「都立学校LAN設置・設計マニュアル」によれば、経済的で省スペースな小型のもので十分であり、大きいタイプのラックを採用する必要はない。他の校内LAN整備工事においては、同マニュアルによる小型ラックを採用配置している。
 このため、積算額約632万円が過大なものとなっている。

【指摘事項】 教育庁 (報告書本文12ページ)

積算

(3)エアミルク充てん工の積算を適正に行うべきもの

北新宿地区市街地再開発事業における街路整備工事において、既設下水道管の残置に伴い管渠内を埋戻しするためのエアミルク*充てん工の積算について見たところ、局積算基準に適用できる工種がないため、見積りにより単価設定している。
 しかしながら、局積算基準では、材料単価の設定について、局に定めのないものを使用するときは、①建設資材定期刊行物、他局単価、②局特別調査による単価、③見積り価格の順位で採用し決定するとしている。
 この手順を準用すると、水道局積算基準に既設水道管の残置に伴うエアミルク充てん工が基準化されており、使用する材料や歩掛りは当工種に十分適用できることから、これを用いることが適切である。
 このため、積算額約323万円が過大なものとなっている。

*エアミルク…水とセメントを混ぜたセメントミルクに起泡剤で泡を発生させたもので、流動性、施工性に優れており隅々まで充てんが可能。

【指摘事項】 都市整備局 (報告書本文13ページ)

(4)定期清掃の積算を適正に行うべきもの

東京都監察医務院(本館・別館)建物管理委託において、本館の定期清掃及び窓ガラス清掃について見たところ、特記仕様書では、年6回の作業を実施することとなっている。
 しかしながら、積算内容を確認したところ、誤って年12回の経費を計上しており、積算額約173万円が過大なものとなっている。

【指摘事項】 福祉保健局 (報告書本文17ページ)

施工

(5)土砂運搬におけるダンプカー過積載防止について請負者を適切に指導、 監督すべきもの

擁壁設置工事及び地盤改良工事(19豊-7)、土壌処理工事(20環-1)での、現場からの土砂搬出については、騒音、振動及び排気ガスの増大を招き、ブレーキ性能やハンドル操作の低下から交通事故を誘発する過積載を防止するために、土木工事標準仕様書や道路交通法等関係法令に基づいた過積載防止対策指針により対策を講ずることとしている。
 しかしながら、請負者から提出された、この2件の工事の記録書類等を見ると、土砂運搬処分において、ダンプカーの過積載が認められるなど、適正を欠くものとなっている。
 これは、積載量を管理した「搬出車両記録表」がしゅん工時に一括して提出されている等、土砂の搬出時に過積載に関する十分な確認がなされていないことから、請負者への改善指示など、指針に基づく適切な指導が行われていないことによるものである。

【指摘事項】 都市整備局 (報告書本文20ページ)

(6)補強土壁の施工管理について請負者を適切に指導、監督すべきもの

梅沢寸庭林道開設工事について、林道開設を行うために設置する補強土壁*の施工管理等について見たところ、設計図書では社団法人日本道路協会の道路土工擁壁工指針に基づき、盛土の締固め度について現場試験を行うこととしている。
 当該試験は、補強土壁の安定に必要な強度特性などを確認するために重要な施工管理項目であるにもかかわらず、工事現場では目視のみで確認し、当該試験が実施されておらず施工管理が不十分となっており適切でない。

*補強土壁…盛土中に補強材を敷設することで垂直に近い壁面を構築する土留め構築物

【指摘事項】 産業労働局 (報告書本文23ページ)

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