平成15年度財政援助団体等監査報告書

東京都監査委員は、本日の平成16年第二回都議会定例会に、「平成15年度財政援助団体等監査報告書」を提出しました。

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監査の概要

財政援助団体等監査は、都が補助金等を交付している団体に対して、その事業が補助等の目的に沿って適正かつ効果的に行われているかなどについて実施する監査です。
併せて、団体に対する所管局の指導監督が適切に行われているかについて監査します。

平成15年度は、補助金等交付団体のうち213団体、出資団体(都が資本金等の25%以上を出資)のうち21団体及び各所管局について、平成13年度及び平成14年度の事業を対象として監査を行いました。

監査の結果

合計で42件の指摘や意見要望をしました。

主な事例

1 補助金の交付について是正のための適切な措置を講ずるべきもの

社会福祉法人東京都社会福祉事業団は、平成13年度から公益事業として社会福祉総合学院において様々な福祉ニーズに的確に対応できる専門性と実践性を備えた総合的な福祉人材の養成を行っている。また、平成14年度から、これに加えて収益事業として学院の施設の貸付を行っている
その収益事業の開始に当たり、新たに施設貸付を行うことに伴い課税される事業所税を支払う必要が生じたことから、福祉局は、当該事業所税のみを補助対象とする「平成14年度東京都社会福祉総合学院事業費補助要綱」(以下「学院事業費補助要綱」という。)を定め、事業団に補助金3,740万1,600円を交付している。
ところで、地方自治法(昭和22年法律第67号)第232条の2によれば、補助金の交付については、あくまで「公益上必要がある場合に」できるものとなっている。
しかしながら、今回の補助金交付の対象となった「施設の貸付に伴う事業所税」は、事業団の行っている社会福祉事業などの公益事業とは別途に、収益を目的とした施設の貸付事業の運営のためのものである。
このことから、この学院事業費補助要綱に基づく補助金の交付は公益上必要がある場合に該当するものとは認められない。
局は、補助金の交付について是正のための適切な措置を講ぜられたい。

【指摘事項】福祉局 報告書本文 P.349

2 補助金の申請を適正に行うべきもの

都は、都内に私立学校を設置し、定時制課程又は通信制課程を置く学校法人が、当該課程に在学する生徒の修学条件の改善を図るために行う教科書及び学習書の給与事業に対し、私立高等学校定時制及び通信教育振興奨励費補助金交付要綱(以下「要綱」という。)を定め、その経費の一部を補助している。
この補助は、平成13年度までは、1年次生は給与を希望する者全員が補助の対象とされていたが、平成14年度は、1年次生も含めた全学年が有職生徒に対象が限定され、そのうち、給与を希望する者に対し、学校が当該年度に履修する教科書及び学習書を給与する経費の2分の1以内の額を補助するものである。なお、対象者の決定に当たっては、証明書等により学校長が適正に決定するものとされている(要綱第4)。
ところで、平成14年度の交付状況について見たところ、学校法人日本放送協会学園の日本放送協会学園高等学校では、表のとおり、当該補助制度に基づく1年次生の補助対象者を733人としているが、在職証明書等で有職であることを確認することなく推定で算出しており、実際に有職であることを証明できる者は、そのうち129人に過ぎないことが認められた。
また、2、3年次生の補助対象者については、有職であることのほかに、前年度までに一定数以上の単位を修得している等の要件が必要であり(要綱別表)、その対象者を2,207人と推定で算出しているが、実際にそれらの要件を満たしている者は、1,690人に過ぎず、不適正な状況が認められる。
その結果、1年次生から3年次生まで合わせて、補助金754万8,000円が過大に交付されている。
学校法人は、補助金の申請を適正に行うとともに、過大に交付された補助金を都に返還されたい。
また、現行の補助申請等の様式は、補助対象となる生徒の補助要件を確認できるものとはなっていないため、局は、その改善を図り、同補助金の審査を適切に行われたい。

【指摘事項】社会福祉法人ふるさと福祉会、社会福祉法人にじの会、社会福祉法人東京アフターケア協会、福祉保健局 報告書本文 P.123(PDF 440KB)

競争による契約に改めるべきもの

東京都下水道サービス株式会社は、有明処理場等の建物管理を、当初から毎年度、特命随意契約で委託しているが、当該委託については、特殊な建物管理業務はなく、また同様の委託については、都などでは競争入札で契約している。

(表)補助金交付正誤表

項目 1年次生 2・3年次生
生徒実数 1,883人 4,563人 6,446人
給与実人員 129 1,690 1,819
733 2,207 2,940
△604 △517 △1,121
1,428,036円 16,950,238円 18,378,274円
補助対象経費 11,003,628 22,471,745 33,475,373
  △9,575,592 △5,521,507 △15,097,099
  9,189,000
補助交付額   16,737,000
(A×1/2)   △7,548,000
【指摘事項】学校法人日本放送協会学園、生活文化局 報告書本文 P.59

3 公の施設の運営委託にかかる繰越金及び引当金について、都への返還を含めその取扱いについて早急に対応すべきもの

福祉局は、都の公の施設である東京都練馬福祉園など11の社会福祉施設の管理運営について、これまで社会福祉法人武蔵野会ほか10団体に対し委託してきている。
ところで、これら公の施設の委託に係る各法人の平成14年度決算報告書を見たところ、単年度の委託契約にもかかわらず、平成14年度末現在で、繰越金が合計14億5,237万余円、各種引当金が合計12億7,500万余円、合わせて27億2,737万余円の余剰金が計上されていることが認められた。
これら繰越金及び引当金が生じたのは、各法人に東京都が福祉各施設を委託し始めて以降、委託料の残額が清算されないで蓄積された結果である。局は、これら繰越金及び引当金の取扱いについては、委託先の社会福祉法人に留保された東京都の資金であると認識し、各法人が自由に処分できるものではないと判断している。
その意味からみると、公の施設の管理について平成15年度より指定管理者制度が導入されているなかで、このような多額の繰越金及び引当金を委託先の社会福祉法人が現状のまま留保していることは適切でない。
局は、公の施設の運営委託から生じたこうした繰越金及び引当金について、都への返還を含めその取扱いについて早急に対応されたい。

【意見・要望事項】福祉局 報告書本文 P.161

4 展示室等の使用料の前納時期を早めるなどし、再利用できるよう検討すべきもの

産業労働局は、東京都立産業貿易センター(以下「産業貿易センター」という。)の管理運営等及び建物維持管理について公社に委託している。
委託内容に産業貿易センターの施設(展示室、会議室等)の利用公開に関する業務がある。展示室又は会議室(以下「展示室等」という。)の利用手続は、利用計画書を提出し、利用承認書により使用料を納入することになっている(東京都立産業貿易センター条例施行規則(昭和58年規則第80号)第2条、第3条、第9条)。また、使用料は、前納になっており、既納の使用料は、還付しないことになっている(東京都立産業貿易センター条例(昭和58年条例第16号)第9条、第10条)。
展示室等の利用は、利用計画書の提出が利用を開始しようとする日の属する年度の前年度の5月1日以降になっていることから、センターでは利用計画書の提出をもって予約扱いとしている。
ところで、利用計画書を提出した者の使用料の納入時期は、利用開始日の15日前までに納入することになっており(センター展示室等運営要領第5)、使用料を納入する前に解約されると、他の者から利用申込がない限り展示室は利用されないことになる。この場合の解約時期が利用予定日の直近であればあるほど、ほとんど再利用は困難である。現に解約され再利用のなかったものは、表のとおり平成13年度23件、平成14年度19件になる。
これらの解約による使用料の収入減を試算すると、浜松町館において平成13年度3,191万7,500円、平成14年度2,504万8,400円にもなる。
局は、展示室等の使用料の前納時期を早めるなどし、再利用できるよう検討されたい。

(表)浜松町館の展示室等解約後の利用状況

解 約 A 解約後の利用 B 解約による使用料収入減
A-B
件数 金額 件数 金額 件数 金額
平成13年度 67 49,234,400 44 17,316,900 23 31,917,500
平成14年度 65 40,446,100 46 15,397,700 19 25,048,400
【意見・要望事項】産業労働局 報告書本文 P.30

5 料金収受業務の委託契約について

首都高速道路公団は、首都高速道路の料金所(平成16年1月1日現在、全部で162箇所の料金所を25の料金計算所で所管している。)における「料金収受業務」の委託契約を行っており、平成14年度は147億余円を支出している。この委託契約について、公団は、競争性の確保を図るため、平成10年度から、従来の特定会社への随意契約を見直し、順次、公募型指名競争入札を採用している。
この公募型指名競争入札を実施するに当たり、公団は、会社の応募資格条件を、
(1)過去5年間に通算して2年以上の有料道路の本線料金所における料金収受業務の経験を有すること(本線料金所以外の料金所のみの経験を有する場合は3年以上)
(2)監督機関(本社・支社)が料金計算所から概ね2時間以内の区域に現にあること等としている。
ところで、受託実績の無い会社では、入札に参加することが非常に困難な応募資格条件となっていることから、平成13年度及び14年度の公募型指名競争入札に係る新規参入企業数及びその受注実績を見ると、表1のとおり、両年度とも新規企業の参入が全く無く、その結果として、表2のとおり、従来からの業者が同一契約を受注し続けており、落札比率(落札価格/予定価格)の平均値も非常に高くなっているなど、公募型指名競争入札を採用しているものの、未だその効果が十分なものになっていないことが認められた。
この状況に対し、公団は、平成15年11月の契約3件(西東京その1、西東京その2、西東京その3)から応募資格条件を
(1)24時間営業で現金収受を行う業務経験を過去5年間に通算して2年間以上有すること
(2)監督機関の区域要件は廃止
(3)取扱い交通量が3万台/日以上の料金所を含む料金計算所(料金所+料金計算所)については、有料道路の料金所(取扱い交通量が3万台/日以上)の収受員としての業務経験を過去5年間に有する者を1/3以上配置することに変更している。
しかしながら、この条件の下に行われた今回の3契約(表3参照)について見ると、上記(3)の応募資格条件が付されていない1契約(西東京その3)には、新規参入があったものの、上記(3)の一定の経験者の配置を求めた応募資格条件が付された2契約(西東京その1、西東京その2)については、新規参入が無いことから、今回の応募資格条件の変更内容では、未だ、不十分なものとなっている。
公団は、料金収受業務の委託契約について、応募資格条件の緩和を検討するなどして、新規参入を促進させ、競争性の確保を図られたい。

(表1)料金収受業務の公募型競争入札に係る新規参入企業数等

年度/項目 発注件数
(契約金額)
落札比率の平均値 新規企業の参加
平成14年度 4件
(3,039,500,000円)
98.97% 0件
平成13年度 8件
(5,957,800,000円)
98.30% 0件

注1 随意契約を含めた契約件数は、両年度とも21件(公募型競争入札で落札した会社には、業績評価を行った上で、その後2回(2年間)を限度として随意契約を結べる。)

(表2)料金収受業務の年度別受託業者

契約件名 平成10年度
受託業者
平成11年度
受託業者
平成12年度
受託業者
平成13年度
受託業者
平成14年度
受託業者
平成15年度
受託業者
料金収受業務
その1
A◎
料金収受業務
その2
B◎ B◎
料金収受業務
その3
C◎ C◎
料金収受業務
その4
D◎ D◎
料金収受業務
その5
E◎ E◎
料金収受業務
その6
F◎ F◎
料金収受業務
その7
G◎
料金収受業務
その8
H◎ H◎
料金収受業務
その9
I◎ I◎
料金収受業務
その10
J◎ J◎
料金収受業務
その11
K◎
料金収受業務
その12
V◎
料金収受業務
その13
V◎
料金収受業務
その14
料金収受業務
その15
料金収受業務
その16
P◎
料金収受業務
その17
Q◎ W◎
料金収受業務
その18
R◎ W◎
料金収受業務
その19
S◎ S◎
料金収受業務
その20
T◎ T◎
料金収受業務
その21
-- U◎ U◎

注1 ◎は公募型指名競争入札、無印は随意契約
注2 VはLとMの合併会社、WはQとRの合併会社、XはGとの合併による存続会社
注3 料金収受業務その21は、平成11年度から業務委託開始
注4 料金収受業務その14及び15は、高速道路出入口と受託業者が管理している駐車場の構造によるため、当該業者に随意契約している。

(表3)平成15年11月の契約について

今回の契約件名 従来の契約件名
料金収受業務
(西東京その1)
料金収受業務その6
料金収受業務その8
料金収受業務その20
料金収受業務
(西東京その2)
料金収受業務その3
料金収受業務その4
料金収受業務その5
料金収受業務
(西東京その3)
料金収受業務その2
料金収受業務その19
【意見・要望事項】首都高速道路公団 報告書本文 P.375

「平成15年度財政援助団体等監査報告書」全文(本文479頁)

第1 監査の概況 表紙~P.8 PDF 44KB
第2 補助金等交付団体別監査結果
1 八丈町 P.9~12 PDF 15KB
2 八丈島漁業協同組合 P.13~14 PDF 10KB
3 財団法人自警会 P.15~17 PDF 16KB
4 財団法人東京都中小企業振興公社 P.18~33 PDF 56KB
5 東京商工会議所ほか10団体 P.34~39 PDF 33KB
6 東京都中小企業団体中央会 P.40~42 PDF 18KB
7 職業訓練法人東京土建技術研修センター P.43~44 PDF 11KB
8 社団法人現代舞踊協会ほか1団体 P.45~47 PDF 21KB
9 学校法人100団体 P.48~62 PDF 79KB
10 財団法人東京都私学財団 P.63~69 PDF 57KB
11 東京納税貯蓄組合総連合会 P.70~71 PDF 14KB
12 東京都職業能力開発協会 P.72~73 PDF 15KB
13 財団法人東京観光財団 P.74~77 PDF 18KB
14 医療法人財団厚生協会ほか14団体 P.78~94 PDF 52KB
15 社会福祉法人清朗会ほか22団体 P.95~112 PDF 53KB
16 社会福祉法人協和会ほか19団体 P.113~131 PDF 51KB
17 社会福祉法人東京サレジオ学園ほか14団体 P.132~149 PDF 50KB
18 社会福祉法人救世軍社会事業団ほか12団体 P.150~185 PDF 122KB
19 財団法人東京動物園協会 P.186~197 PDF 143KB
20 財団法人東京都公園協会 P.198~213 PDF 45KB
21 西東京バス株式会社 P.214~215 PDF 41KB
22 多摩ニュータウン環境組合 P.216~217 PDF 10KB
第3 出資団体別監査結果
1 八丈島空港ターミナルビル株式会社 P.219~229 PDF 41KB
2 財団法人東京都福利厚生事業団 P.230~249 PDF 79KB
3 株式会社建設資源広域利用センター P.250~259 PDF 79KB
4 東京臨海熱供給株式会社 P.260~266 PDF 43KB
5 東京都道路公社 P.267~278 PDF 33KB
6 株式会社東京スタジアム P.279~285 PDF 58KB
7 財団法人東京都環境整備公社 P.286~293 PDF 35KB
8 財団法人東京都生涯学習文化財団 P.294~318 PDF 30KB
9 東京トラフィック開発株式会社 P.319~325 PDF 76KB
10 財団法人東京都保健医療公社 P.326~339 PDF 26KB
11 社会福祉法人東京都社会福祉事業団 P.340~361 PDF 42KB
12 首都高速道路公団 P.362~386 PDF 72KB
13 東京都住宅供給公社 P.387~418 PDF 132KB
14 東京熱供給株式会社 P.419~425 PDF 94KB
15 多摩都市モノレール株式会社 P.426~432 PDF 78KB
16 株式会社東京テレポートセンターほか2団体 P.433~451 PDF 70KB
17 株式会社はとバス P.452~459 PDF 34KB
18 株式会社セントラルプラザ P.460~465 PDF 25KB
19 財団法人東京都高齢者事業振興財団 P.466~476 PDF 44KB
第4 団体索引 P.477~479 PDF  9KB